其々の気持ち


セフィロスは世界の神羅が誇る英雄。男はその強さに憧れ、女はまるで創られた様な美貌に魅了され、本人の意思関係なしに目立つ存在である。そんな英雄扱いされる彼もひとりの人間。ソルジャーなのによくタークスの部署へ足を運ぶのには理由があって、そこには最愛の女性がいるのだ。
仲睦まじい二人。それは周知の事実なのだがセフィロスの人気は相変わらず。彼が任務の途中で情報を得ようと他人に話しかけたとき、それが女性ならば気に入られようと必死になる姿を見ることができる。しかし、彼女―…***もセフィロスの任務に同行したことはあるものの、そんな光景を見ても一切動じる事がない。セフィロスが忙しく、月に一度しか会えないようなことがあっても様子は変わらない。彼のことを理解しているからなのだが、セフィロスはどうも納得していないようだ。


「ザックス、聞いてくれ。この前俺が任務があるからしばらく戻らないって***に言ったんだ。そしたら、何と答えたと思うか!?」
「…な、なんだ…?」
「わかった、だけだぞ。頷いて…終わりだったんだぞ!……素っ気無いと思わんか」
「えっと…。俺に言われてもな、そんなに気になるなら直接***に聞いてみたらいいんじゃない?」
「うん、わかった…行って来る」
「…うんってキモいよ、セフィロス」



――――



自分のデスクの上に積まれた書類の束。今日はこれが終わらないと帰れないなあ…なんて思いつつ手を動かしていると背後に人の気配がする。振り返らずともわかる、ツォンさんだ。私がやらねばならない仕事がまた追加された。書類の山がまた高くなっている。小さく溜め息を吐いてからすぐ隣のレノのデスクを見るとそこにある山は低く、なんでこんなに差があるのだと、思わず泣きそうになる。
私はよくレノと任務を遂行することが多いのだけど、報告書などは大抵私に任せられてしまう。理由は簡単、ツォンさんはレノは期限までに提出してくれるなんて期待をしていないから。早く終わらせなきゃ、セフィロスはまた長い任務なのだ。


「おー、***。お疲れさん」
「レノがやってくれたら早く終わるんだけどな〜」
「謹んで遠慮しとくぞ、と。それにしても…今日中に終わんのか?」
「終わらせなきゃ、駄目なのよ!セフィロスに会いに行きたいんだもの…」
「ちょっと抜け出せばいいじゃねえか。偶には甘えてやらないと、英雄さん愛想つくかもしれないしな。この間、八番街でキレーなお姉さんに逆ナンされてるのを見たぞ、と」
「…し、知ってる…わよ。でも、あんまり文句言うと、鬱陶しく思われるんじゃないの…?」


私だって元々はセフィロスのファンっていう所から今に至るわけで。彼に寄って来る女性は沢山いるのだから、それに一々嫉妬して、彼に言っていたらきりが無いし、きっと嫌われてしまう。できるだけ完璧な女性でいたいという気持ちは恋していれば思う事だと思う。だからこうやってレノに話を聞いてもらう事が多々ある。ヘラヘラしているように見えて結構口が堅いのを知っているから。


「いいか、レノ様の話をよーく聞けよ。はっきり言っちまうとお前はどこの誰が見ても英雄さんに愛されてんだ。だからそんなに悩まずに思ってることはセフィロスに言っちまえ。好きな女に嫉妬されんのは男にとっちゃ嬉しいもんなんだぞ、と」
「そうなのかな…。でもこんな私じゃセフィロスには似合わないと思うし」
「完璧な女よりもそうやって色んな表情してる***の方がよっぽど可愛いと思うけどな、俺は」


そんなものなのか、と言ってみるとレノにちょとくらい照れろと頭を叩かれた。可愛げの無いやつで悪かったわねと睨みを効かせてみると、そんなことねーよ、と出入り口の方に向かってレノが大きく息を吸って叫んだ。


「そうだよな、英雄さんよ、と!」
「…え、せ、セフィ…!?」
「あーあ、行っちまった。さっきのアレ、セフィロスは全部聞いてたみたいだぞ」
「は、は!?」


なんとなく、もうセフィロスのとこにお嫁に行けないと思ってしまった。死ぬほど恥ずかしくて、手元にあったファイルで暫くレノを叩いていた。



(ソルジャーフロアに戻ってきたセフィロスの表情の崩れ様に泣きそうになっていたザックスがいた)


レノ様はいいアドバイザーだと思います。
20090127




 


あきゅろす。
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