愛ゆえのわがまま



急に仕事を中断させられ、ヘリで行き着いた先はコスタ・デル・ソル。タークスで忙しい身の私よりも上を行く多忙さの彼―…ルーファウスは何故こんなことをするのだろうと疑問に思いながらもちゃっかり握ってくれている手の温かさに、ま、いいかと笑みを浮かべていた。


「確か、貴方の別荘もあったよね」
「嗚呼…そういえばあったな。だが今日はそこではない。普通に、***とあそこに行きたいだけだ」
「っていうことは、ビーチ貸し切るの?」
「否…普通にと言っただろう?」


一般の人間も同じ場にいると言うこと。普段、あらゆる観光スポットを彼の貸し切りにするのはリラックスする為と、それから警戒をしやすいからという理由がある。だから本当はこの計画、反対されるだろうに…それでも許可を得る事ができたのは仮にも私がタークスだからだと思う。ルーファウスとお付き合いをしている私でさえコスタ・デル・ソルへ行くと言われたのは先ほどだし、普段彼の護衛を任されることの多いツォンさんはきっと今頃ルーファウスの急なスケジュールに胃痛で苦しんでいる頃だと思う。

それから少し経って、ビーチの近くにあるヘリポートに着陸した。ルーファウスに何かが入っている鞄を渡されたので首を傾げると、水着等色々用意したから着替えてこい と告げてルーファウスも更衣室へ行ってしまった。男性更衣室から少し離れた場所に女性用のそれがあったので私もそこで渡された荷物を広げて見る。……私じゃ絶ッッッ対に選らばなさそうな黒に濃いピンクの花の飾りが付いた―ひとことで言えばセクシーなビキニが入っている。下もリボンで留めるようになっているやっぱりこれはルーファウスの趣味であろう物。恥ずかしくて着たくない…けれど、他に着る物も何もない為このビキニを着るしかない。意を決して身に付けているスーツを脱ぐ事にした。




「……遅かったな」
「だってこんなビキニ着るの初めてで、恥ずかしくて…」
「そうか。だが、***にとても似合っている」
「あ、ありがと…う」
「では、これを羽織ってくれ」


渡されたのは少し大きめのパーカー。大きなパラソルもあるし日に焼けはしないと思うのに、泳いでもいないのに、もう羽織るの?と疑問に思いながらも大人しく着ることにした。ルーファウスはその美しく鍛えられた身体を惜しげもなく曝しているのに。その身体に周りからの視線が集中していることに気付かないのかな…、私は小さな嫉妬をしているのだと思う。


「ルーファウスは泳がないの?」
「そうだな…」
「じゃあ、私も一緒に、」
「それは駄目だ。お前が着いて来るなら私は泳がないよ」
「……え?」


折角来たのに、泳がないのか、というよりも私が一緒だと嫌だと言われている気がして自然と視線が下に行ってしまった。嫌なら私を誘わなければ良かったんだ。そんな私の心の内を汲み取ったのか、隣でクスクスと小さく笑いながらルーファウスが私の肩を抱いた。触れられた手は素肌に、じゃないけれど抱き寄せられた私の頬に当たる先は紛れも無くルーファウスの素肌で、嫌でも顔が熱くなってしまう。


「すまない、変な意味で言ったわけではない」
「じゃあ、どうして急に出掛けるなんて…」
「気分転換したかったのがひとつ。貸し切りでないのは…偶には私と***の仲を皆に見せつけてやりたかったのだよ」
「は……は!?それなら泳がせてくれないのは…?」
「お前の素肌が曝されるのが嫌だからだ。…其れ位わかるだろう」


抱き寄せられたこと、そして多分ルーファウスの端整な顔立ちの所為か先ほどから嫌と言うほど見られていることに恥ずかしさが増し、思わず離れたくて座っていたそこから腰を上げて移動しようとした、が、それは適わず。腰辺りをを強く引かれより彼と密着させられる形になってしまった。恥ずかしい、死にそう。


「お前が照れで嫌がっているのはわかるのだが、」
「…うん?」
「ちょっとな、私が***を恋人として隣にいる事が幸福で、自慢がしたいのだよ。其れ位今の私は喜びで満ち溢れている。わかるか?」
「わからないことも…無いかも」
「そうだろう。だから、結婚する事になったら世界中にお前の事を自慢してやるから心の準備でもしておけよ」


耳元で囁かれて、それに対して首を横に振ることができるわけがない。羞恥よりも喜びが勝った私は顔の火照りが冷めないままに深く頷いていた。



(ふと気が付けば辺り一面が野次馬に囲まれていた)


社長の水着ってどんななのかなと考えたところ、想像がつかなかったです。それくらいきっと…綺麗な水着姿だと思います。
20090125




 


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