差し伸べられた優しさ:5



その日、セフィロスは任務の報告書を提出し、その後の時間が空いていた為ビルの中をぶらぶらと歩き回っていた。考えるのはあの時の女性のこと。全く目にしていない。あれだけ辛そうな表情をしていて今、ルーファウスの元で幸せなのかと考えてみても、セフィロスはそうとは思えなかった。嫌でも浴びる視線を無視しながら辺りを見ると知らぬ間にタークス部署へ来ていたらしい。特に親しい者もいない彼はそのまま素通りするつもりだったのだが、聴力の高い彼の耳に入ってきた会話に思わず足を止めてしまった。


「……ったく、忙しいのになんで私たちが…」
「仕方ないだろう、シスネ。副社長と彼女の事を知っている人間は少数しかいないのだからな」
「そうね。それはそうなんだけど」


副社長…―ルーファウスと聞いた瞬間、話していたツォンとシスネの元へ自然と足が動いていた。おい、とセフィロスが声を掛ければ彼の方へ驚きの視線が向けられていた。


「セフィロス!?何故ここにいる」
「…それはどうでもいい。お前たちの任務、***に会えるのか」
「どうして貴方が彼女の名を知っているのかしら?」
「色々あってな。事情は全て***の口から聞いている。その任務…よければ俺が代わってやるが」
「「…は?」」


セフィロスらしからぬ一言に、タークス二人は引き締めていた口元への力が抜けてしまい間抜けな表情をしていた。そんなに変な事を言ったかと当の本人はムッと口を曲げてしまっていた。それに気付いたツォンがひとつ咳払いをしてから。

「今回は私たちも行かねばならない。セフィロスは、一緒に着いて来てくれ。何があるかわからないからな」

そう言って許諾した。これで漸く***に会える。会える、なんてまるでセフィロス自身が彼女を求めている様にしか聞こえないのだが実際、ここ数日の彼は妙にそわそわしていて携帯の画面を見たり、ソルジャーの任務の予定をラザードにしつこく聞くという様子が見られた。やはり、それだけ彼女の事が気がかりだったとも言えた。



同日の夕方。指定された場所へセフィロスが静かに向かうと一台の車が止まっていた。タークスの2人に聞いた話では、ルーファウスの取引先の女性と対談するのだと言う。どこかのレストランでもいいものをあえてルーファウスの邸宅を指定した。それはもしかしたらただ、その女性がルーファウスとお近付きになりたいだけかもしれないが。これからその女性と待ち合わせした場所へ向かうらしい。セフィロスは、一々自分を見て騒がれるのが嫌らしいので奥の席で静かに窓の外を見ていた。


「……セフィロス、着いたぞ」
「ああ」


気付けばふたつほど前の列に神羅ではいなかった女性が座っていた。恐らく例の取引先の、だろう。女性が車を降りてしばらくしてからセフィロスも目立たぬように降りた。玄関口に入ろうとした時、視界の端に何かが映った。シスネがそれに話しかけている。


「***様、セフィロス、いますよ」
「…ほ、本当に…?」
「ええ。ほら、」
「……久し振りだな」
「!う、うん…久し振りね」


少しぎこちないやり取りだが、そこまで言い終えるとシスネは例の女性の相手をしなくてはいけないから、と邸内の奥へ消えていってしまった。セフィロスが其方から***の方へ視線を戻すと、かなり戸惑った様な仕草を見せた。手で握りすぎた所為かフレアスカートに皺ができている。


「先ほどの女性は?」
「ああ。何でもルーファウスと話があるらしい」
「…そう……。でもルーファウスはまだ帰ってないわ」
「それはそうだろう。同時刻に帰れば危険やもしれんからな」


上がらせてもらう、セフィロスはそう言ってから***の私室はどこだと問うた。指し示した場所は先ほどの女性が行った方向とは真逆。恐らくルーファウスの私室と言うのは女性のいるゲストルームの近くにあると思われる。この部屋の位置にすらルーファウスの嫌がらせだと思ったセフィロス。その感情が自然に、抱いていた***の肩を強く引き寄せた。




(やっと、会えた)


タークスで誰が好き?と聞かれたら真っ先にシスネ!と答えます。
20090121








あきゅろす。
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