差し伸べられた優しさ



お話を読む前に下記に目を通して、了承した方はどうぞお読み下さい!

この話はルーファウスに寄りがちなセフィロス夢です。話の都合上、ルーファウスは敵の様な立場になります。当サイトの中ではディープな話になると思うので、嫌悪感を抱いた方はお戻り下さい。




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ミッドガルに聳え立つ神羅カンパニー本社。私の父はよく、仕事の関係で足を運ぶことが多いみたいだが、自分自身が赴いた事はなかった。神羅が嫌いなのではなくて、ただ、外に出る機会がなかっただけ。両親揃って、過保護だと思うくらい大切に育ててくれたから、世間知らずとまではいかずとも有名なこの会社を間近で見るのは初めて。


「***、緊張しているのかい?」
「勿論、しますよ!父様がいるとは言え…」
「何、心配することはないさ」


父に連れられ、社内のとある部屋の扉の前で止まった。本当は、こんなの望んでいないのに。でも拒否できなかったのは言葉に出すのが苦手なのと、親不孝者になってしまいそうだったから。父が先に扉をノックして、中へ歩を進めた。私は、父に促されてからゆったりと中へ入る。本当は、もっとさばさばと歩きたいのだけど、物心ついたときからしている稽古なんかの癖がもう抜けなくなった。プライベート以外では、これが当たり前。


「おお、よく来た。君の愛娘と言うのは、そちらの子か?」
「ええ。貴方の息子に無礼な真似はしないでしょう。ルーファウス君、如何かな?」
「…とても気立てのよさそうなお嬢さんですね」


プレジデントとルーファウスの向側に座らされた。今日、何故ここに連れてこられたかと言うと婚約の話。父は神羅ほどではないけど、それでも大企業の社長を務めている。プレジデントとの付き合いから出た話だと思う、お互いの子を…と。でも、正面のルーファウスは全然視線を合わせてくれない。気立てのよさそう、なんて全然嬉しくない。彼は、きっと私との縁談話は嫌なのだと思う。視線が合わずとも、突き刺さる冷たい気を感じる。こんな縁談話、得するのは私の父だけなのではないかと思う。


「(この空間に居たくないっ)」
「……い、おい、***」
「…あ、はい」
「顔色が悪いようだが、大丈夫か」
「えっ、そんな、平気です…」
「うむ。ルーファウス、***さんをどこか休める場所へ連れて行ってやりなさい」


彼と居たくない、という気持ちは叶わず。ルーファウスは椅子から立ち上がって私の脇まで来、手の平を此方へ差し出した。どれだけ私を嫌がっていてもこういう所はしっかりしているのね…。躊躇いがちに彼の手に自分の手を重ねると、軽く握られて、引かれ、私は抗わずに立ち上がる。その瞬間、背筋が凍る程の悪寒がした。繋がった手を通して彼の心を感じ取ってしまったのだろうか。殺気にも似たそれにツゥ…と汗が一筋。


「私はな、お前みたいなお嬢様、が嫌いだ」
「…ルーファウス、様」
「皆に愛され、何もできなくとも構わない、鈍感なふりをして裏で男を騙すなんて考えていそうな、お前が嫌いだ」
「そんなこと…ない」
「どうだか。この縁談が成立したとして、私はお前などを愛すつもりはない。期待しないことだな」


わかっているつもりだった。これは父の会社の為、それが目的で。恋愛結婚になどなりはしないと思っていた。頭ではわかっているのだけど、それでももっと…ロマンティックなものでありたいと、どこかで思っていたのだ。ルーファウスと顔を合わせるのは勿論今日が初めて。見た瞬間、金髪碧眼で整いすぎた端整な顔立ち、白いスーツと妖しげに弧を描く口元。正直に言ってしまうとプレジデントと彼が親子と言うのは信じられないと思ったほどで。恋愛、といったものをしたことがなかった私は第一印象最高な彼が、たとえ親同士が決めたものであっても夫になってくれるなら幸せなのではないか、と思ったんだ。一瞬、だけ。


「生憎と私は忙しい身だ。悪いが、戻らせてもらう。お前は会社から出るなよ、私の責任になってしまうからな。あとは勝手に部屋に戻れ」
「わ、かり…ました」


考え事をしているうちに、ルーファウスは私の手をさっさと離して、どこかへ消えていってしまった。立ち去る姿さえも様になっていて、きっと何も関係がない時ならうっとりさえするだろうもので。でも、今の私はそれすら胸に痛みを走らせる原因になってしまっている。第一印象とは言え、ルーファウスにほんの少しでも好意を持ってしまった私。これから浴びせられるのはそれを裏切られるような物ばかりなのはわかっているのに。思わず、胸の辺りを強く握ってしまった。




(比例するかのようで、消えることは無いのだろう、この傷は)


セフィロス夢です。彼まだ出てきませんが、セフィロス夢です。でも大分ルーファウス寄りになりそうです。
20090116








あきゅろす。
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