静寂の時



今日は、久し振りにセブンスヘブンにメンバーが集合してお食事会を行う事になっていた。私も例外でなく、ここでティファにお世話になっているから調理のお手伝いをしている。野菜を切る音と鍋で食材を煮込む音が絶えずキッチンから響いてくる。マリンもデンゼルも、クラウドと一緒にどこかに行ってしまったので此処は今とても静か。


「ねーティファ、今日ってヴィンセントちゃんと来る、かな」
「大丈夫よ、***。ヴィンセントね、あの事件以来携帯電話ちゃんと買ったから」
「え、何ソレ!私聞いてないんだけど!」
「…なんかね、***とは電話使わなくても問題ない、とか言ってた。結構ヴィンセントってロマンチストなのかしら…」
「は、恥ずかしい…」


確かに、ヴィンセントはもう神羅屋敷の棺桶で眠る事もないだろうからあの場所にはいない。それはいいことだけど、そうなると彼がどこにいるかは捜さないとわからないわけで、携帯電話を持っていても不思議じゃない。彼の言うことは嬉しいと同時に話す機会が減るって言う事だからあんまり素直には喜べないなあ…と思う。
ぼーっと考え事をしながらお互い黙々と料理を作り上げ、完成した頃には丁度いい具合に夕方になっていた。改めて完成した品を見てみると…凄く、大量。まあ皆食べてくれるから大丈夫だと思うんだけどね。ふと、耳を澄ましてみるとダイニングの方から色んな声が聞こえてきた。知らない間に皆来ていたみたい。ティファと顔を見合わせて、早く持っていこう!とお互いトレーに料理を乗せ、運びつつ皆に挨拶に向かう。


「久し振り、皆!」
「わー、***の持ってるそれ美味しそう!お金がもったいな……ご馳走食べれるからお腹空かせて来たよ!」
「…ユフィの場合は金の節約の為だろ」
「まあまあ、いいじゃないのクラウド」


とまあ、盛り上がっているといっても予想通りユフィ中心にがやがやと騒いでいただけらしい。何回か往復して料理を並べ終えると、皆待ってましたと言わんばかりに料理に箸を付けていった。自分で作ったものだけどなかなか美味しい。お酒も用意したのでバレットやシド、などなど皆少しずつ酔いも回ってきているみたいだ。


「…ね、ヴィンセントもこっち来て話そうよ」
「私は遠慮しておく」
「そんなこと言わないでさー」


迷惑そうな顔ではないのだけど、ちょっと困ったような表情はしていた。でも、折角来たんだからやっぱりヴィンセントとも話したい。あの…カダージュ達の事件の後、何をしていたの?とか、大丈夫だとは思うけど生活に不自由してないか、とか。会えなかったのが淋しくて色々話を振っていたんだけど、元々口数少ない彼と会話が続かなくてちょっと、自分悲しいなあーなんて思ってしまった。


「でね、この前ティファとお菓子作ってて、ヴィンセントでも食べれるような…」
「***、」
「っ…え?」
「ちょっと、口を閉じろ」
「…はい」


やっぱり鬱陶しかったのかな。自分で喋っておきながら思いっきり後悔していた。俯いてしばらくすると、自分の顎に私のものでない指がかけられ、上を向かされた。…私の近くにはヴィンセント、彼しかいない。


「話さなくても、***がいればそれだけで十分だ」
「…っうん!」
「好きだ」
「私も、好き」


そのまま唇が重なって、本当に久し振りの感触に思わず涙まで出そうになって。酔いしれようとした瞬間、ふらふらになるまで泥酔していたと思われたメンバーがじーっとこちらを見ていて、顔が一気に熱くなった。ヴィンセントはと言うと、好きにしておけと平静だった。



静寂の時

20081230







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