困惑 ラヴコール



大変なことになった。嬉しいけど、幸せすぎるくらい幸せだけど、これじゃあ私の心臓がもたない。大好きなヴィンがやっとのことで携帯を所持してくれた時に言った『ヴィンの声が聞きたい』発言は間違っていたのかもしれないと少し後悔している…と思う。さぁ電話が掛かってきた。この通話料はどうやって払っているのかとか実は気になる。もしかして携帯をプレゼントしたケット、もといリーブさんが負担しているんじゃないかと思うと申し訳なくて堪らない。


「もしもし、ヴィン?」
『あぁ私だ。よく分かったな』
「だっていっつも電話来るからヴィンのだけ着信音変えてるの」
『…なるほどな』


その後はちゃんとご飯食べたか、とか戦いの訓練はしているのかとか、変な男に絡まれたりしてないかとか(ルーファウスとかレノとか)、今何をしてるか?とか。ヴィンは好きな人を縛りたいタイプじゃないと思うけどなかなか会えないから私が何をしてるのか、気になるんだと思う。勿論私もそうだけど大抵は忘らるる都の泉にいたりするし、ヴィンに限って浮気はないかなって思うから。


「そういうヴィンは何をしてるの?」
『今か?……まぁ色々、だな』
「なんか怪しい。もしかして好きな女の子と遊んでるの?」
『有り得ん、***以外の女に興味はない。それくらい***もわかっているだろう』


わかっていたけど、それを本人の口から言われるのとでは全然違うんだ。低いハスキーボイスは私の心に柔らかく染みていって。だから毎日電話が掛かってきたって全然迷惑なんかない。凄く嬉しい。けど、毎回電話の最後に死ぬほど恥ずかしい言葉をさらりと言うのは辞めてほしい、かな…。なんかヴィンて天然な所あるから自覚ないみたいで余計に厄介。


『じゃあな、…愛してる、***』
「わ、わか、ってる…よ。じゃあ、ね!」
『あぁ』


ピッという機械音を聞くとようやく私の心臓は落ち着きを取り戻す。いつも当たり前のように言ってくるけど私が慣れるわけがない。あいしてる、って言われることを分かっていて電話をするのって緊張するし…。でも、本当は電話なんかよりも直接彼にすき、って言いたいんだ。電話を通した声と実際の声って結構違いがあるし。


「…会いたいなぁ………」
「………呼んだか?」
「きゃあっ!ヴィ、ヴィンセント…!?何で此処に…」


背後から独り言に返事が返ってきたと思ったらヴィンが立っていた。どうやって入ってきたんだろう。どうやら、電話をしながら走ってここまで来ていたらしい。本気で心臓が止まるかと思った。彼は私に会いたいと来てくれたらしい。きっとエアリスがこの場にいたら『愛されてるー!』って冷やかされそう。…見てないよねエアリスは…。


「わ、私も会いたかったよ!」
「やはり電話越しよりも本当の***を見たほうが私も嬉しい」
「ヴィン…恥ずかしいよ」
「事実を言っただけだ」


揺ぎ無い瞳を向けられ、私は自然に目が離せなくなり互いに見詰め合う事になる。ヴィンの声が大好きで、離れていてもお喋り、できるけどやっぱり彼の腕の中で頭に響く心地の良い声を聞くことが最高の幸せだと思う。



困惑 ラヴ
(すき、は本人の前でしか言ってあげないよ)







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