はい、もしもし



何度目か分からないほどの大きな事件がまた解決した後、シドが新型だと騒いでいた飛空挺シエラ号の中で、騒がしくも懐かしいメンバーが揃っていた。そして、そこでひとつの話題が浮上。…その話の中心人物が私らしいのだが。


「皆携帯持ってんだからヴィンセントも持つべきだよ〜!」
「今まで大して必要だと思ったことも無い。だから私はいらない」
「…でもケット・シーもこれ、使ってるんだよ?」
「どうせ私は古い奴だ。悪かったな、ユフィ」


もっとも、自分がタークスとして働いていた頃は連絡に必須だからと専用の携帯を装備していたが今となっては、意味の無いものだ。……思えば私はクラウドと***以外に携帯を使っているところをほとんど見たことはないのだが…。クラウドは仕事上必須となり、***は会話を好むからな。


「ユフィ、ヴィンは何言っても頑固だからなかなか聞き入れてくれないよ」
「***ー…!残るは…強行突破!ねぇ、誰か使わない携帯持ってない?」
「あぁ、それならボク持ってますー。会社のなんやけどよければ、使っとき!」
「ナイス!ケット!」


どこから取り出したのかもわからない黒のシンプルな携帯を受け取った。ぬいぐるみの中は、機械だと思うのだが、あれに入っているのか…?リーブの考えを汲み取るのはここからでは難しい…。携帯を所持するのはいいとして使い方を忘れてしまった。もう何十年も触っていないのだから当然といえば当然。メンバーに聞くのも気が引ける私はどうすべきか唸っていた。


「…ヴィン、電話の使い方教えてあげるよ」
「いいのか」
「うん!わからないからって誰にも相談できなくて使わないで、結局電話屋なんてどこにあるかも知れない店を利用しようとしてるのはわかってるんだから!」
「***、全てを言うな…」
「ご、ごめん。でも使い方教えてあげるよ!」


そう言って***は自分の物となったそれを奪い、電源を入れた。何をやっているのかは言ってくれないようだが、その後とりあえずという事で電話機能を説明してもらう。メールも後ほど教えてくれるようだ。メール…か。自分のこの手では打ち辛い事この上ないだろうと思う。


「大体わかった?」
「あぁ、感謝する」
「よかった。それで、ね、携帯、使うときは最初に私に電話してほしいなぁ!…なんて。ヴィンの声、一番先に聞きたい」


駄目かな、と目を伏せる***に拒否などできるはずもなく。これで携帯の使い道ができたというわけだ。聞きたいときに彼女の声を聞くことができる、話すことができる。直接会うに越したことは無いが久しぶりの握る物の感覚に懐かしさと、嬉しさが込み上げた。



はい、
(本当にお前は、愛らしいな)
(なに、言ってんの…!?)








あきゅろす。
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