微妙な境界線



ザックスが最近実力をつけ、もうすぐ1stまであがれるという所までやってきた。もう『子犬のザックス』だと馬鹿にはできないかもしれんな。まぁ、人懐っこい所は今も変わらないが。そして実力のお陰かソルジャー1stの俺や***との任務も回数が増えてきた。せっかく二人でデートがてらの任務か?と思ったところでの邪魔者のようだがあいつの性格上俺も嫌うことはできないようだ。アンジールが弟の様だと言うのも頷ける。


「大した事無い任務だったな」
「そういうこと言わない!セフィロスが苦労する任務だったら私たち絶対死んじゃうよ…」
「だよな、俺まだ2ndだし絶対やばいって!」


もっとも俺自身が自分の実力をわかるから言えるのだが、俺を苦労させる任務など用意する方が大変だろうと思うぞ。まぁ何があろうと俺が体を張って守ってやるがな(ザックスも命だけは、な)。どうでもいい会話をしながら神羅ビルへと歩いているとザックスのPHSが鳴り響いた。画面を見つめているところからどうやらメールが届いたらしい。あいつ、最近メールよく来るような気がするのだが。文字を追っていると急に手招きをして***を呼び寄せた。一緒になって内容を読んでいるようだが 距 離 が 近 い 。知ってたか?俺だって人間の感情ぐらい持ち合わせているさ、嫉妬深いんだ。


「***、お前は少し危機感を持て」
「……ん?もってるよ、一応ソルジャーだしね」
「そういう意味じゃない。ザックスともう少し離れろ」
「いや、お、俺そういうわけじゃねぇから安心しろって!」


どういうわけだ。***の手からPHSを取り上げて中を見ると…どうやら俺のFCからのメールだったらしい。というか、ザックスが…俺の?半ば無理矢理入会させられたものだと信じたい…のだが。しかしこういう情報網というのは凄いものだと思う。俺の目撃情報は勿論のこと、アクセサリーのメーカーだの先日とった食事だの。なんだか監視されているようで少々気味が悪いのだが。…思った、***もこのメールが気になるのならばFCとやらに入会すればいいのではないか?まぁ日夜一緒にいてその必要はないだろうがな。


「うーん…残念だけど、いくらセフィロスのだと言ってもファンクラブに入るつもりはないよ」
「私はセフィロスの全てを知ってるから、って?羨ましいよなぁセフィロスは!」
「ち、ちちがっ!そうじゃなくて…」


…ザックスは実は子犬などではないのではないか?と思う。こんな発言をするとは思わなかったぞ。互いの全てを知っていたらどんなに幸せかと思ってしまうけどな。いろんな意味で知っていると言えば知っているが。
ただ、***との付き合いはかなり長いが今まで「ファンクラブ」とかそういう単語を彼女の口から聞いたことはない、気がする。俺に言い寄ってくる奴は大概「ファンです!」みたいな事が多いのだ。何か、違うのだろうか。


「セフィロスは…私に貴方のファンでいて欲しかったの?」
「よくわからん。だが俺はそれでいいんではないかとも思うのだが」
「そっか…あのね、私は昔からセフィロスのファンなんかじゃなかったんだよ」


そう、言われた瞬間少しだけ、気付かないふりだって可能な程胸に痛みが走った。俺は戦いにしか興味が無かったから***に出会ってからそんな感情を抱くようになったわけで、たった一人とも言える女性にそのような言葉を言われてはいくら俺と言えどショックを受けないはずはない(と思うぞ)。だが一呼吸置いた後***が俺を見上げて微笑んだ(お前と言う奴は!)


「ファンじゃない、好きなのよ」


本当に、おまえは俺の弱点になりかねんな。



微妙な境界線
(複雑な女心とでも言おうか、)







あきゅろす。
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