よろずや東海道本舗(香×志摩)
休みの日には・・・?
今日は夕方から香が家に来る

部屋を簡単に片付け、香が来るまでまだ時間があるのでDVDでも観ようと近くのレンタルショップに来た

レンタルショップにはキョウの特設コーナーが作られており、改めて香の人気を実感する

その中の一つに《キョウファン必見!》の文字を見つけた

「『愛のままに』って確か前に依頼人が探して欲しいって言ってきたやつだよな。よし、これにするか」

よく内容も確かめずに借りた事を話が進むにつれ反省した

「確かにキョウファン必見だ・・・」

話はベタベタなラブロマンスの上、見ている人が本当に恋人になった様な錯覚をする作りになっていた

何気ない仕草、優しい笑顔、まるで自分に向かって囁かれている様な甘いセリフ

「やべぇ、何かドキドキしてきた」

それでも観てしまうのはやっぱり、香の演技が上手いからだろう

だが、次の瞬間、志摩の思考は完全にストップした

画面の中で繰り広げられているのは濃厚なベッドシーン

香の息遣いや女性の喘ぎ声が部屋に響き渡る

「リアルすぎるだろ・・・」

結局、最後まで観てしまった



と、その時タイミングを見計らったかの様にチャイムが鳴った

香が来たのだろう

志摩は慌てDVDをソファーの下に隠す

「はっ、はーい!今行く」


ガチャーー


「よっ、よう!早かったな」

さっきまで見ていたドラマのシーンを思い出してしまい顔が急に熱くなった

「そう?それより志摩さんどうかした?顔赤いけど熱でもあるんじゃ・・・」

香がそう言って志摩の額に手を当てる

「なっ、無い無い!気の所為だよ、今コーヒー入れるから中入って座ってろって」

志摩は香の背中を押してリビングへと追いやる

「ビビった〜。ただでさえ香の顔まともに見れないのにいきなりあんな事///」



「どうしたんだろ、今日の志摩さん」

いつもと違う志摩の態度に香は首を傾げる

するとソファーの下から何かが覗いているのが見えた

手にとって見てみると見覚えのあるタイトルが・・・

「香、お待たせ。コーヒー持って来たぜ・・・って、あーー!!」

「志摩さん、もしかしてこれ観た?」

「・・・・・・観ました」

香がガックリと肩を落とす

「よりによって何でこれを観るかな」

「仕方ねーじゃん。お前が来るまで暇でDVD借りに行ったらこれがあって、前に依頼人が探してたからどんなのか気になったんだよ!」

「ふーん。で?」

香が真っ直ぐに志摩を見つめる

「で?ってなんだよ!?」

次にどんな言葉が返ってくるか分かってしまい嫌な汗が流れる

「そりゃ、感想にきまってるでしょ」

「お前、俺に感想を求める・・・?」

「もちろん。一応俺の出てる作品なんだから気になるじゃん」

(何て答えたら良いんだ、俺!)

志摩が自問自答している顔を見て香が吹き出す

「やっぱ志摩さん面白い」

「っ、からかったのかよ!!」

「ごめんって(笑)」

志摩にはまだ笑っている香を軽く睨む事しか出来なかった






「さ、メシ出来たよ」

「おっ!うまそー」

(犬みたいって言ったら怒るだろうなぁ)

湯気が立っている鍋を覗き込んで目を輝かせている志摩の姿を見て香は心の中で呟く

「今日は鍋にしてみました」

「腹減ったー、早く食おうぜ!」

「「いただきまーす」」

美味しそうに食べる志摩と目が合い、香は優しく微笑む

「っ、ごほっ!」

「志摩さん大丈夫?」

急にむせた志摩の背中をさすりながら顔を覗き込む

「わりぃ、大丈夫」

(香の微笑む顔がドラマにで出来たまんまだったからむせたなんて言えねぇ・・・)

すると背中をさすっていた香の手が止まった

志摩が振り返ろうとした瞬間、いきなり背中から抱きしめられた

「かっ、香!?」

声が裏返ってしまったのは仕方のないことだろう

「俺はあなたが好き。世界中の誰よりも・・・あなたの全てを俺にくれませんか?」

耳元で囁かれた言葉に思わず息をするのを忘れていた


「 」



しばし沈黙の後、志摩がため息をついた

「・・・お前、それドラマのセリフだろ」

「正解w」

「語尾にハートつけんな!」

志摩をからかって反応を見るのが楽しいのだ

「だって志摩さん意識しまくりだもん」

「しょうがねぇだろ、あんなの見た後で意識するなっていう方が無理だ」

結局、食事の後2人してそのDVDを観ることになった



「うわー、やっぱり自分が出てるやつ観るのって何か恥ずかしいな」

「心配するな、この先もっと恥ずかしいやつのオンパレードだから」

そして例のベッドシーンに差しかかった

「あー俺ちょっとコーヒー入れてくるわ・・・」

「ダメ」

立ち上がりかけた香の服の裾を志摩が引っ張る

「じゃ、トイレに・・・」

「香ちゃん!」

志摩に睨まれ、香はついに観念して座り直した

「このシーン、特に監督のこだわりが強くて何回かダメ出し食らったっけ・・・」

「だからかー、かなりリアルだったぞ?」

「まさかもう一回見る羽目になるなんて思わなかった」

会話の最中も画面からは女性の喘ぎ声が聞こえ、香のアップが映し出されている

「お前エロすぎ・・・」

「仕方ないじゃん、役なんだから!」

恥ずかしいのだろう、香の顔が赤くなっている

「形成逆転、だな」

さっきの仕返しとばかりに志摩は香をからかう

「志摩さんの意地悪!」

「お前だって散々俺の事からかっただろ?」

「うっ、それは・・・」

「お返しだ」

「志摩さ〜ん」

半ば涙目になっている香を見て、たまにはこんな休日も悪くないなと志摩は心の中で小さく笑った




fin.

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