PEACE MAKER 鐵(土方×沖田)
知れば迷い 知らねば迷わぬ 恋の道

「あれ?土方さん、今日は伊藤さんたちと宴があるって言ってませんでしたっけ?」

突然部屋に現れた土方に総司がきょとんと首をかしげる

土方は不機嫌さを隠しもしないで総司の布団の横にドカリと座った

「あらら、どうしたんですか?そんなに荒れて」

土方の様子に総司がくすりと笑う

「どうもこうもあるか。あの野郎、酒が入ると余計たちが悪い。ことあるごとに俺の身体に触ってきやがる。挙げ句、厠にまで着いてくる始末だ、おちおち小便も出来やしねぇ」

思い出しただけで鳥肌が立つのか土方は腕を両腕でさすっている

「あはは、それで逃げ出してきたんですか?お疲れ様です」

「ったく、笑いごとじゃねぇ」

憮然とする土方をよそに総司は可笑しそうに笑った





「ところで、お前は伊藤とはどうなんだ」

他の隊士達はそれぞれ一対一で飲みに誘われたという話を聞いた

総司にもそんな誘いがあったのかと思い聞いてみると、総司は少し困ったように笑った

「あー、あの人は私にはあまり近寄ってこないかな」

「伊藤と何かあったのか?」

「伊藤さんが入ったばかりの頃、私に聞いてきたことがあって・・・」

そう言って総司は伊藤との会話を思い出す





ーー「貴方、土方殿とどういう関係かしら?」

「どういうって、土方さんは試衛館時代からの兄弟子ですよ」

「本当にそれだけ?」

当たり障りのない返事をした総司に対し、尚も無遠慮に視線を送ってくる伊藤に少しムッとした総司はあえて含んだ言い方をした

「さあ、どうでしょうね。あとはご想像にお任せします」

それからというもの、どうも伊藤は総司のことを恋敵と認識しているようなのだ





「馬鹿。お前、そこは否定するとこだろうが」

土方が軽く頭を抱える

「だってー、面白くなかったんですもん。入隊早々土方さんに馴れ馴れしくして。それに、もしかしたらそれで諦めてくれるかなと思って・・・」

効果無かったですけど、と口を尖らせる総司の表情を見て思わず土方がくっ、と笑いを漏らした

「なっ、何が可笑しいんですか!」

「それじゃまるで、やきもち焼いてるみたいだと思ってよ」

土方の言葉に総司がハッとして照れ隠しにそっぽを向く

「もう、土方さんの意地悪・・・」

「悪かったよ。機嫌直せ、総司」

優しく自分を呼ぶ声に涙が出そうになった



やきもちを焼いたのは本当

昔からずっと土方さんのことが好きだった

私のことを命を懸けてまで守ってくれようとしたあの日、

空っぽだった私に生きる意味を与えてくれたあの言葉、

私にとってはあのときからずっと土方さんは特別な存在だった



ーーけれど土方さんには近藤さんと誓った約束があって、立ち止まるわけにはいかない

だからせめて、前だけを見て進めるよう、立ちはだかるものは私が斬り捨てます

わずかな時間でも側にいて共に闘い、共に生きれればそれだけで良い

たとえ、あとほんの僅かな時間しか残されていないとしても、あなたが必要としてくれるなら私はーー・・



この想いは私の心の内にそっと・・・



そんな総司の気持ちを知ってか知らずか、土方はまだそっぽを向いたままの総司の頭をポンポンと撫でた

「もう、子供扱いしないでくださいよー」

冗談目かして笑えば、優しい眼差しの土方と目が合う

「まだまだガキだな」

「ひっどーい!何ですかそれ」

鬼の副長と呼ばれる彼の笑う顔が好きだ、と思う

「総司」

不意に改まった口調で名前を呼ばれドキリとする

「何ですか?」

するとふわりと正面から抱き締められた

「ずっと側にいろ・・・」

「!!」

辛そうに吐き出される言葉と感じる温もりにまた涙が零れそうになった

「・・・はい。ずっと側にいます」



ーーごめんなさい。私はもうすぐあなたの前からいなくなる

でも、例え身体は朽ちても私の心は、魂は

いつまでも貴方と共にあり続けるから・・・





土方さん、愛しています。

いつまでもーーー・・





fin.


[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!