鋼の錬金術師(ロイ×エド ※死ネタ)
偽りと真実 (ロイエドパロ エド20歳・ロイ34歳)

俺、エドワード・エルリックは15歳の時にその技術を買われて、政府の研究機関で働くことになった

父、ホーエンハイムが名高い研究者だった事もあり、20歳となった俺は教授―つまりその機関のトップリーダーにまでなった

もちろん、外部に情報が洩れれば戦争にもなりかねないから、研究内容は極秘だったしそこで働いているということも言ってはいけない

別にそのことに不自由を感じることも無く、俺はただいつもと同じ毎日を過ごしていた

そんな毎日に変化が起きたのはずっと空き家だった隣に人が越してきたからだった






ピンポン――‥



玄関のチャイムが鳴ったので出てみると、そこにいたのはこの国では珍しい黒髪と漆黒の瞳を持った男だった

「どちらさま?」

「エルリックさんですか?先日隣に越してきたロイ・マスタングといいます。挨拶が遅れてしまってすいません」

男はそう言って頭を下げた

「あっ、いや、そんなこと気にしなくていいって。俺はエドワード・エルリック、エドワードでいいよ。えと、マスタングさんだっけ?俺に敬語は使わなくていいから」
 
「そうかい?ではエドワード、私のこともロイでいい。これからよろしくな」

そう言って笑ったロイの顔を見て俺は純粋に“格好良い”と思った

「おう!こちらこそよろしく、ロイ」

差し出された手を握り返しながら俺も笑顔で応えた

それがコイツ、ロイ・マスタングとの出会いだった
 
 



それからというもの、ロイは頻繁に俺の家へ来るようになった

あまり料理が得意ではないロイの為に、ご飯を俺の家で一緒に食べることも少なくない

今日も2人で食事をしているとロイがおもむろに聞いてきた

「そういえば君はどこで働いているんだい?」

「え、俺!?俺は、その・・・小さな研究所で色んな研究をしてる、かな」

俺は咄嗟に口ごもってしまい、慌てて答えた

「色んなって、どんな?」

ロイは尚も突っ込んで聞いてくる

「色んなは色んななの!どうしてそんなこと聞くんだよ?」

「いや、興味があったのでね」

エドワードとしては政府の研究機関で働いているとは口が裂けても言えないので、何とかごまかそうとロイのことに話を振った
 
「それより、アンタの方こそ何の仕事してんだよ?まさか社長とか?」

「いいや、社長秘書をしている」

「マジ!?どこの会社?」

「イースト社だが」

「げっ、あんな大手一流企業の社長秘書だったのかよ・・・」

誰でも知っているような大手企業の名前が上がれば驚くのも無理はなかった





そうしていつしか2人の関係は親密になっていき、恋仲となったのは出会って3ヵ月とたたない頃だった

もちろん毎日とまではいかないが、お互いの家に泊まったり、休みには2人で出掛けたりと幸せな日々を過ごしていた

そして、出会ってから1年が経とうとしていたある日、いつものようにエドワードがご飯を作って待っていると、ロイから一本の電話があった

「すまない。急な会議が入ってしまって遅くなるから先に休んでいてくれ」

「そっか、分かった」

少々残念に思いながらもエドワードは仕方なく早々にベッドに入ることにした
 




バタン――‥





扉が閉まる音で目が覚めたエドワードは、部屋に入ってきたロイに声を掛けた

「ロイ、お帰り。・・・どした?」

ロイの様子がいつもと違うことに気付いたエドワードが声を掛けた直後、そのままベッドに押し倒され乱暴に口付けされる

「ん!ちょっ、ロイ!!止めろって!どうしたんだよ!?そんなに酔っ払って」

今まで何度も身体を重ねてきたが、ロイは一度だってエドワードのことを乱暴に抱いた事など無い

それにこんな風に酔っ払うロイの姿も見たことが無かった

「っ・・・はん・・・ちょっ、ロイ・・・やめ・・・っん・・・どうしたんだよ、急に・・・はっ・・・あん・・・っロイ・・・?」

「・・・愛している・・・愛しているんだ、エドワード」

エドワードの問いかけにもロイは愛してると言うだけで答えようとしない

その声も甘く囁くようなものでは無く、まるで自分自身に言い聞かせているかの様だった





「っ痛ぇ・・・」

(ロイの奴、どうしたっていうんだ?あんなこと今まで無かったのに・・・)



カチャ――‥



「おはよう、エドワード。気分はどうだい?昨日はすまなかった・・・。会社で少し嫌な事があってね・・・」

詳しくは語ろうとしないロイにエドワードもそれ以上聞くことはしなかった
 




「それより、今週の土曜日に少し付き合ってくれないか?」

「別にいいけど、どこ行くんだ?」

エドワードの質問にロイは行けば分かるよ、とだけ答える

その日からロイはどこかエドワードと深く関わらないようにしている様にも見えた

それに時折見せるひどく辛そうな表情も気になった
 
 



約束の土曜日、車を走らせるロイは終始無言だった

そして、ある建物の前で車を停めるとエドワードを中へ案内する

中に入るといきなりエドワードは2人の男に捕らえられた

「うわっ、何だよお前ら、離せっ・・・ロイ!?どういうことだよ!」

エドワードの問いかけにもロイは振り返らず、ただ俯いているだけだった
 
「ご苦労だった。マスタング君」

声のした方を見たエドワードはそこにいる人物を見て息を飲む

「・・・っ、キング・ブラッドレイ・・・」

キング・ブラッドレイは反政府派のトップで、その実力から政府も容易に手が出せずにいる危険人物だった

そんな人物が目の前に居るということが、ロイがエドワードに近付いた目的を明白にしていた
 
 



イースト社の社長秘書というのは表の顔で、ロイは裏ではブラッドレイの命令の下、今まで様々な任務を忠実にこなしてきたのだった

今回は“政府機関で働く研究者エドワード・エルリックの研究内容を探る”という任務だった

その為にロイはそれとなくエドワードに近付いて、情報を聞き出そうとしたり、家を探ったりしていたのだが、特にこれといった情報も無いまま1年が過ぎようとしていた

1年経っても何の成果も上がらないことに痺れを切らしたブラッドレイは、直にエドワードを連れてくる様に命令した



ロイはその命令に従うしかなかった――‥
 




その晩、ロイは浴びるように酒を飲んだ

しかしいくら飲んでも酒に溺れることは出来なかった

酒の力を借りてエドワードを乱暴に抱いたにも関わらず、エドワードは心配そうに私を見つめてきた

きっと全てを知れば君は私を軽蔑するだろうな

そして、もう二度と笑いかけてくれないだろう・・・

だから今だけ、あと少しだけ、君をこの手で抱きしめていたい

君を愛しているんだ、エドワード――‥
 
 



「・・・全部、嘘だったんだ・・・最初から・・・それが目的で・・・」



あの笑顔も、口付けも、

愛してるって言ったのも全部“嘘”だったんだ・・・



「俺、バカみたい・・・そうだよな、じゃなかったらアンタが俺みたいなガキで、ましてや男なんて相手にするわけ無いよな・・・」

エドワードは自嘲気味にそう呟きながら、ロイと出会ってからの一年を思い返してみる
 
「でも・・・楽しかった。俺にとってアンタと過ごした時間は、とても楽しくて・・・幸せだった。だから、もういいや」

その言葉にロイが僅かに顔を歪ませ、拳を握り締める

だが、エドワードからはロイの後ろ姿しか見ることが出来ないので、ロイがどんな表情をしているのかは分からなかった





「さて、ではエドワード・エルリック。政府の研究について知っていることを話してもらえるかね?」

ブラッドレイの声が大きく響いた

「断る。アンタに話すことは何も無い!」

ブラッドレイを真っ直ぐ睨んで言えば、相手は一瞬目を細めた

「そうか。ならば殺すしか無いな」

その言葉にロイが声を上げた

「待って下さい!!話が違います!彼に危害を加えないと言ったではありませんか」

「はて、そうだったかな?この歳になるとどうも物忘れが激しくてね」

そう言ったブラッドレイの目は笑ってはいなかった

「お願いします。どうか彼に手を出さないで下さい。お願いします!」

必死で頭を下げるロイを見て、ブラッドレイは考えるような仕種をした

「ふむ。それで、君はどうするんだね?まさかこのままで済むとは思っていまい」

「私は、どうなっても構いません。ですが、彼だけは・・・」

「では、一つゲームをしようじゃないか。ここに6発の銃弾がある。君がそれを受けて尚、立っていることが出来たなら彼を解放しよう」

「分かりました」
 
「なっ、何考えてんだ!止めろって、ロイ!!そんな事をしてもコイツは俺を解放したりしない!!」

そんなことをすれば確実にロイは死ぬ

それにこの男が素直に自分を解放するとは到底思えない。それはロイも分かっているはずだ

なのに何故自ら死を選ぶような真似をするのか――‥

俺を差し出せばロイは褒められこそすれ、立場が悪くなることは無いだろう

ロイ自身もそれを望んでいたから俺に近付いた。なのに今になってどうして・・・
 
「すまない、エドワード…」

ずっと黙ったままだったロイがエドワードの方を振り返って謝る

「ずっと君を騙していて。何度も本当のことを言おうと思ったが、どうしても言えなかった・・・君と一緒にいるうちに、私は本気で君を愛してしまった。真実を告げれば君の側にはもう居られない。君に嫌われることが怖くて耐えられなかった・・・」

ロイの表情は苦しげで、後悔しているのが伝わってくる

「君と過ごした1年は私にとって、今までで一番幸せな、かけがえのないものだったから・・・自分からそれを壊すようことは出来なかった。だが、そのせいで君をこんな目に・・・」

きっと私が耐えられたとしてもキングはエドワードを殺すだろう

それが分かっていて尚、私がそうするのは――‥
 
「君を失いたく無いんだ・・・」

もう、私は君のいない世界で生きていくことは出来ない・・・

君が私の全てだから――‥

側に行き、唇にそっと触れるだけのキスをする

「愛している、エドワード」

そして優しく微笑んだ
 
 



「最後の挨拶は済んだかね?マスタング君」

「はい」

ブラッドレイの問いに短く返事をすると、一言よろしい、と返された

ブラッドレイが静かに銃を構える

カチリ、と安全装置が外れる音がした

ロイは深く息を吸い込み、真っ直ぐにその銃口を見据えた

辺りがしん、と静まり返る
 
 




ドンッ――‥




「・・・っ」

その衝撃に一瞬、息が止まった

ゆっくりと息を吐くと、鳩尾の辺りに鋭い痛みが走る

2、3度咳をすると口の端から血が零れた

倒れそうになる身体を支えるため、腹に力を入れると傷口からは真っ赤な血がポタポタと流れ落ちる
 
それでもなんとか5発の銃弾に耐え、残すところ1発となった

「なかなか見事だよ、マスタング君。まさか君がここまで耐えるとは私も思ってなかった」

だが、ブラッドレイの言葉も最早、私の耳には入ってこなかった

身体はとっくに限界を越えている

今の私を支えているのはエドワードへの想いだけだった

「残念だよ、私は君の事を高く評価していたんだがね」

そう言ったと同時にブラッドレイが引き金を引いた――‥
 
 



「ロイーーっ!!!」





最後の弾をその身に受けたロイは、ドサリという音と共にその場に倒れた

「ロイ!!離せっ・・・離せよ!ロイ!!」

暴れるエドワードを見てブラッドレイは離してやれ、と命令した

自由になったエドワードは、倒れているロイの元に駆け寄り抱え起こす

「ロイ!」

エドワードの呼び掛けにロイがわずかに唇を動かす
 
(す、ま、な、い)

声にならない呟きはそう告げていた

その動きを読んだエドワードは思わずきつくロイを抱きしめる

しかし、ロイはもう何の感覚も持たなかった

開いている目にも、もはやエドワードの姿は映っていない

「ロイ・・・俺、今でもアンタの事・・・愛してるから」

ロイの耳にはもう届かないだろう言葉――‥
 
しかし、エドワードは虚空を見つめるロイの瞳から一筋の涙が零れるのを見た



その刹那――‥



一発の銃声が鳴り響いてエドワードはロイの上に倒れ込んだ

ブラッドレイがその引き金を引いたのだ

けれど死に逝くエドワードの顔は安らかだった

わずかに笑みを浮かべて傍らのロイに触れる





『これからは、


    ずっと一緒だぜ、


        ロイ――‥』





fin.


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