鋼の錬金術師(ロイ×エド ※死ネタ)
″当たり前 ″こそが『幸せ』だった

「愛してるよ、鋼の」

何十回と言われ続けてきた言葉

コイツはまるで挨拶のように軽々しく、俺に“好きだ”とか“愛してる”などと言ってくる

その度に俺は欝陶しそうに「あー、はいはい」とか言って適当に流していた



本当は嬉しかったはずなのに今日はつい、そんなことを口走ってしまった――‥



朝、いつものように大佐は俺を見つけると、まるで挨拶でもするかのようにさらっと「愛してる」と言ってきた

「いい加減止めろよ、欝陶しい」

俺はきつめの口調で大佐にそう言った

「・・・鋼のは、私の事が嫌いかい?」

「あっ、当たり前だろ!誰がアンタなんかっ・・・調子に乗んな、この自意識過剰が!!」
 
つい、反射的にそう言ってしまった

別に本心から思ってたわけじゃ無い

大佐は一瞬傷付いた表情をした後、そうか、と言って苦笑した

「図書館行ってくるっ」

「鋼の、報告書は?」

「後で!」

俺は気まずくなって大佐の執務室を足早に出て図書館に向かった
 
 



図書館で本を読んで、しばらく経った頃、ハボック少尉が血相を変えて俺を呼びに来た

「大将!!大佐がっ・・・」

いつもタバコをくわえて飄々としている少尉の姿しか見たこと無かったからちょっとびっくりしたけど、それよりも大佐の名前が上がったことの方が気になって仕方が無かった

少尉は車を運転している間、一言も口をきかなかった

俺も何も聞けなかった

そして車は病院の前で停車した――‥
 
 



前を歩く少尉の背中が何故か遠く感じて、俺はともすれば止まってしまいそうになる足を懸命に前へ動かした

急に少尉がある部屋の前でピタリと足を止める

その部屋を見た俺は、頭が真っ白になった

「霊・・・安室・・・?ハボック少尉、大佐は?俺、大佐のところに行きたいんだけど・・・」

自分でも分かるくらい声が震えていた

少尉は黙ったまま静かに部屋のドアを開ける

中にはホークアイ中尉がいて、肩を震わせて泣いている

いつも冷静で凛としている中尉が泣いているところを俺は初めて見た

「中尉・・・」

声を掛けると中尉がハッと顔を上げる

きっと俺が来たことにも気付いて無かったんだ

中尉の前には顔に白い布を被せられた“誰か”がいて・・・

俺はその人物の布をおそるおそるめくった
 
「っ大佐・・・!」

ベッドに力無く横たわる大佐の顔は、まるで眠っているみたいだった

「眠っているみたいでしょう?」と中尉が俺の考えを読んだかのように言った

「打ち所が悪かったんですって・・・車に引かれそうになった女の子を助けて、それで・・・」

中尉はそう言うと目頭を押さえながら部屋を出ていった

「大佐?何寝てんだよ、また中尉に怒られるぞ・・・っ・・・俺の報告書もまだだろ?なぁ、大佐・・・目開けてくれよ・・・頼むから・・・」





『愛してるよ、鋼の』





脳裏に大佐の声が蘇った



―いい加減やめろよ、欝陶しい―



―調子に乗んな、この自意識過剰が!―



酷いことを言った――‥

まさかあれが最後になるなんて思いもしなかった

大佐の言葉が本心からだってちゃんと分かってた

欝陶しいなんて嘘だ。本当はいつだって嬉しかった

素直になれずに憎まれ口たたいて、それでもアンタは笑ってた

そんな日がこれからもずっと続くんだと思ってた

いつもそこにいるのが当たり前で、会えば必ず温かく迎えてくれる

俺にとってアンタは“帰る場所”だったんだ――‥

そのことに今になってようやく気付いた
 
 



『気持ちは言葉にしないと伝わらないからね』





前に俺が「何でそんなに恥ずかしげもなく言えんだよ」って聞いたら、アンタはそう答えて笑った

俺、アンタに自分の気持ち伝えたこと無かったよな、

こんなことになるならもっと素直になればよかった

生きてるうちに伝えたかった

「俺も、アンタのことが好き・・・ううん。愛してるよ、大佐・・・ずっと言えなくてごめんな・・・」

そう呟くと、エドは冷たくなったロイの唇にそっと口付けた――‥







fin.


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