鋼の錬金術師(ロイ×エド ※死ネタ)
愛してる

エドワードは東方司令部にあるロイの執務室に呼ばれていた

大事な話がある、とだけ言って電話を切るロイに何故か一瞬不安が頭をよぎったが、それよりも久しぶりに恋人に会える喜びの方が大きかった

それがまさか、あんな事を言われるなんて思ってもみなかったーー‥





「今、なん・・・て?」

「だから“別れよう”と言ったんだ」

唐突に言われたロイの言葉に頭の中が真っ白になった

「そんな・・・何で・・・急に別れようなんて・・・嘘、だろ?」

「嘘では無い。私は来月結婚することになった。相手は古い知人の娘さんでね、私の事をとても愛してくれている。私も彼女の事を・・・愛しているんだ」

何度もエドワードに“愛している”と言った口で他の人を愛していると言った

「・・・俺とのことは、″遊び″だったのかよ?愛してるって、ずっと一緒にいようって言ったのは・・・全部嘘だったのか・・・?」


「そう思ってもらっても構わない。それに君も分かっていたはずだ、こんな関係がいつまでも続くはずないと」

苦しそうなエドワードの問いかけにもロイは表情一つ変えず冷たく返す

その態度にカッとなって思わずロイに掴みかかった

「怒ってるなら殴っていいぞ」

ロイの言葉に握りしめていたエドワードの手が力無く落ちる

ロイが不思議に思ってエドワードの顔を見るとエドワードは目に涙を一杯溜めていた

その表情にハッとするロイだったがもう後戻りは出来ない

「どうした?殴らないのか?」

一瞬酷く傷付いた顔をしたエドワードはそのまま走って部屋を飛び出して行ってしまった





ドンッ


「くっ、・・・最低だな・・・私は」

思い切り机を叩き辛そうな表情のロイ

先程までの態度とは明らかに違う

だがすでに走り去ってしまったエドワードには、そのロイの表情の意味など分かるはずもなかった





それから数日が経ったが、エドワードはまだショックから立ち直れずにいた

何を言っても上の空で、まるで魂がここに無いかのよう

何回か軍でロイと顔を合わせる事はあっても、まともに顔も見れずに報告書等は全部リザやハボックに渡してもらっていた



ーー大佐は俺を見ても顔色一つ変えずに「やぁ、鋼の」なんて声を掛けてくる

大佐にとっては俺はただの遊びで、何でもないことなんだ・・・

そう思うと余計に涙が出て来て悲しかった――‥





ーー前から鋼のが歩いてくる

案の定私を見つけても目を合わせようとはしない

まぁ当然か・・・あれほど傷付けておきながら今更――‥

私が何事も無かったかのように声を掛けると、鋼のは涙を我慢して私の横を早足に通り過ぎて行った

その姿にツキン――と胸が痛んだ





部屋に戻ったロイは机の中にあった箱を取り出しポツリと呟く

「結局渡せなかったな・・・」

中にはエドワードの誕生日に渡すはずだった髪留めが入っていた

ロイはそれをポケットに仕舞うと息抜きをしようと外に出た





(大佐は本当に俺の事なんか何とも思ってなかったんだ・・・)

数日前のロイとのやり取りを思い出しまた涙が出そうになる

ロイの事を考えていて頭が一杯だったエドワードは目前まで迫って来たトラックに気付くのが遅れた

気付いた時にはもう遅く、避けられない――‥と思って目を閉じた

その瞬間、愛する人の懐かしい声と温もりが一瞬エドワードを包み、そして強い力で押されたエドワードの身体は数メートル弾き飛ばされた







当ても無しに歩いていると鋼のが歩いているのが見えた

その表情は暗く沈んで、悲しみの色に染まっていた

そんなエドワードを見てロイは自己嫌悪する

すると突然、エドワードのすぐ側に一台の大型トラックが迫ってきた

しかし、本人は全く気付いていない様子でロイは慌てて走り出す



「鋼の!!」





ドンッ――‥





激しい衝突音と共にドサッっと倒れる音がした





エドワードはうっすらと目を開けた

目の前まで迫ってきていたトラックとの衝突は避けられないはずだったが、何故か襲ってくるはずの強い衝撃と痛みが無いことに気付き辺りを見回して愕然とした

辺りは血で真っ赤に染まり、その中心には

ロイが横たわっていた―――‥

「そ・・・んな・・・何で・・・だよ・・・どう、して・・・」

倒れているロイの側に駆け寄り抱き抱える

「大佐!?っ・・・大佐!なぁ大佐!!何でだよ!どうして俺を庇ったりなんかしたんだよ!」

「っ・・・鋼、の・・・よかっ・・・た・・・無事・・・で・・・」

目を開けたロイは目の前で泣きながら自分を心配するエドワードに優しく微笑んだ

「どうして庇ったりなんかしたんだよ・・・っ・・・俺の事なんてどうでもいいんだろ?・・・来月結婚するって言ってたじゃんか・・・なのにこんな大怪我して・・・何で・・・!」

「そう、だな・・・何度も・・・諦め、ようと・・・思った・・・私、では・・・君に・・・将来を、約束する・・・事は・・・出来ない、から・・・」

「っ・・・そんなの関係ない!それでも俺はアンタと一緒にいたかった!」

「エド・・・君の、未来を・・・奪い・・・たく・・・無かっ、た・・・んだ」

そう言いながら涙を拭ってやるとエドワードは驚いた表情でこちらを見ていた

「アンタは馬鹿だよ・・・そんな事して俺が喜ぶとでも思ってんのかよ!?俺が・・・幸せになれると、本気で思ってんのかよ!!」

「ふっ・・・そう、だな・・・すまな・・・かった・・・エド、ワード・・・君を・・・愛して・・・いる」

ロイの言葉にエドワードは涙を溢れさせた

「・・・君に、・・・渡したい・・・物、が・・・ある・・・んだ・・・」

そう言ってポケットから取り出したのはあの髪留めが入った箱だった

中を開けてみるとエドワードの金色の髪に似合いそうな綺麗な髪留めが入っていた

「少し・・・遅くなって、しまった・・・けど・・・お誕生日・・・おめ、でとう」

エドワードはその髪留めを着けて笑顔を見せた

「うん、ありがとう」

髪留めはやはりロイの見立て通りエドワードの髪にピッタリだった

「よく・・・似合・・・っている」

そう言いながらロイも微笑む



「っ・・・ゴホッ、ゴホッ、・・・ぐっ・・・ゴホッ!!」

何度か咳き込んだ後ロイは大量の血を吐いた

「大佐!!しっかりしろっ!大佐!!・・・なぁ、お願いだから・・・・・・俺を置いていかないで」

絞り出すような悲痛な声に、ロイは痛みを堪えながら動かない身体を必死に動かしエドワードにそっと口づけた

エドワードは突然のことに驚き、そのせいか涙も止まっていた

「っ・・・泣くな・・・私、は・・・君の・・・笑った顔、が・・・好き、なんだ・・・」

「・・・うん・・・分かった」

エドワードは服でゴシゴシと涙を拭った

ロイは急に襲ってきた睡魔に意識を持っていかれそうになるのをなんとか堪えようとした

だが、徐々に身体に力が入らなくなっていく

視界もぼやけて何か言おうとするのだが声にならない

必死に自分を呼ぶエドワードの声を聞きながら、そこでロイの意識は完全に途絶えたーー・・






静かに眠るその顔はとても幸せそうで

だけどエドワードは涙が止まらなかった

「泣かないって・・・約束したのにっ・・・」






ロイ



ありがとう



俺を、愛してくれて―――‥




それに答えるようにエドワードの髪に留めてある髪留めが一瞬強く光輝いた







fin.




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