鋼の錬金術師(ロイ×エド ※死ネタ)

学校帰りのエドワードは突然の雨に降られて慌てて家に帰るところだった

公園のそばを通りかかると猫の鳴き声が聞こえた

立ち止まって耳をすませてみるとやはり猫だ

草むらの陰に段ボールに入れられて捨てられている

もとは白色なのだろうが、雨と泥にまみれてところどころ灰色になっていた

こんな雨の中にいたら弱って死んでしまうかもしれない

エドワードは少し迷ったが、描を家に連れて帰ることにした

途中でコンビニに寄り、普段なら絶対買わないであろう牛乳を買って家に帰った

「ただいまー」

誰もいないと分かっていても、ついこそこそとしてしまう

そのまま風呂場へ行くと、腕に抱きかかえた猫を洗面器に入れてきれいに洗ってやる

「よし、きれいになったな」

猫が身体に付いた水をぷるぷると振り払う

「うわっ、冷てっ …」

猫はありがとうとでも言うかのように、エドワードの手をペロリと舐めた

きれいになった猫をタオルで丁寧に拭いて、簡単にドライヤーで乾かす

「気持ちいいか?」

エドワードの問いかけに答えるかのように猫は「にゃあ」と鳴いた



次にエドワードは買ってきた牛乳を皿に入れて少しだけ温める

「ほら」

牛乳を持ったエドワードの後ろを猫が着いてくる

牛乳が入った皿を新聞紙の上に置くと、猫はおいしそうにピチャピチャと音を立てて舐め始めた

「お前よくこんなもの飲めるよなー。そんなに美味しいのか?」

牛乳嫌いのエドワードにとっては、こんな不味いものを美味しそうに飲む猫の気持ちが分からない

しかし猫はエドワードに向かってまた「にゃあ」と鳴いた

「お前、俺の言葉が分かるのかよ」

そう言って嬉しそうにエドワードは猫の頭を撫でた



「ただいま、エド」

「おかえり」

帰ってきたばかりのロイにエドワードは猫を見せる

「あのさ、今日猫拾ったんだけど飼っていい…」

「ダメだ」

言い終わらないうちにロイが口を開く

「第一、君も学校があるし私も仕事があって家にいないのにどうする気だ?面倒も見れないのに動物を飼う事はダメだ。元の場所に捨ててきなさい」

「でもっ…」

「エドワード、捨ててくるんだ。いいね?」

「…」

エドワードは黙って俯く

「エドワード、」

「…うん」

仕方なくエドワードは猫を段ボールに入れて、ロイと共に公園に向かった

「じゃあな」

名残惜しそうに猫の頭を撫でながら、エドワードは段ボールを元の場所に置いた

「みゃー…」

猫の鳴き声に聞こえないふりをしてエドワードはその場を立ち去る

その姿を見たロイは猫を買うことを許してやろうと思い、エドワードの頭に手を置く

「エド…」

その瞬間、エドワードを追いかけてきたさっきの猫が車道に勢いよく飛び出した

すぐ目の前には車が迫っている

ロイは思わず車道に飛び出して、猫をその身で庇っていた

ドンッーー・・

身体を強い衝撃が襲い、ロイは地面に投げ出された

「ロイ!?」

エドワードが駆け寄り、ロイを抱き起こす

「…エド…」

「ロイ!大丈夫か!?しっかりしろ!」

エドワードの問いかけにロイは軽く微笑むと腕の中の猫をエドワードに預けた

「名前、決めないとな」

「え…?」

「この猫、随分と君に懐いているようじゃないか…昼は司令部に連れてくればいい、ブラックハヤテ号もいるからな…ちゃんと面倒見るんだよ…」

エドワードの目から涙がこぼれる

「うん…ありがと…」

ロイはそっと猫の頭を撫でた

「私の代わりにエドワードを守ってやってくれ…」

その言葉が分かったのか、猫はにゃあと返事をした

それを聞いたロイは安心したように静かに目を閉じた

「ロイ…?ロイ!?なぁ、ロイってば!目開けてよ…ロイー!!」




「名前、決めないとな…」

エドワードは涙を拭って猫の頭を撫でた

じっと猫の目を見つめて呟く

「お前の名前はロイ″だ」

エドワードの言葉に猫は短く鳴いてエドワードの頬をペロリと舐めた

猫の目はロイと同じ漆黒を纏った優しくて温かい瞳だった

その瞳はまるで、ロイが優しく見守ってくれているような懐かしさを感じさせる瞳だったーー・・





fin


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あきゅろす。
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