WILD ADAPTER(久保田×時任)
二人で

いつものようにどこかのヤクザ達と追いかけっこをして、久保田と時任は裏路地を走り抜けていた

久保田の手には拳銃が握られており、最小限の玉で確実に相手を仕留めている

「これでラストかな?」

追っ手達を片付けると、久保田は立ち止まり時任の方を振り返る

「みたいだな、早く帰ろうぜ?久保ちゃん」

時任がそう言って笑顔を向けてくるので久保田の顔にも自然と笑みが浮かぶ

「そうだね」

さっきまで銃で人を殺していたとは思えないような優しい笑みだった

「今晩何食べようか?」

「そうだなー。じゃあ俺、鍋が・・・」

「時任!」

言いかけた声を遮るように久保田が時任の身体を突き飛ばし銃を構える



ドンッーーー!!



二発の銃声が鳴り響いた

一つはまだ息のあった敵に向けて久保田が撃ったもので、相手は完全に絶命している

だが、それと同時に久保田もまた時任をかばい腹部に銃弾を受けていた

「久保ちゃん!!」

力を失い倒れる久保田の身体を時任が寸前で抱き止めるが、意識は無く傷口からはおびただしい量の血が流れ出ていた

ぐったりとする久保田の名前を必死に叫びながら、時任は出血を止めようと傷口を手で押さえる

しかし血は止めどなく流れ続け、時任の手も真っ赤に染めていた

「久保ちゃん!しっかりしろよ、久保ちゃん!」

何度目かの呼び掛けのあと、久保田がうっすらと目を開けた

「・・・と・・・き・・・とう」

小さく名前を呼びながら久保田は時任の頬にそっと手を触れる

「怪我・・・して・・・ない?」

自分の方が大怪我なのにも関わらず久保田は時任の心配をしていた

「俺は大丈夫だけど、久保ちゃんがっ・・・!」

時任の目尻に浮かんだ涙を親指で拭いながら、少しでも心配をかけないよう痛みを堪えて笑みを浮かべた

「大丈、夫・・・だから・・・」

だが、途端に激しく咳き込むと大量の血を吐いた

「久保ちゃんっ!!」

押さえた手の隙間からポタポタと血が溢れる

「ごめ・・・ん、ね・・・?」

苦しそうに肩で息をしながらも久保田は時任に笑みを向ける

「もうそれ以上喋んなくていいから。今、モグリに電話して・・・」

言いかけた時任の手を掴み小さく首を振った

「いい、から・・・ね?」

「けどっ・・・!」

そして、そのまま掴んだ時任の手を自らの頬に当てて目を閉じる

「・・・あったかい・・・」

久保田の体温は徐々に失われていっていた

「久保ちゃんが冷てぇんだって」

少しでも自分の体温が移るようにと時任は久保田の身体をそっと抱きしめた

「・・・ずっと・・・いつ死んでもいいと思ってた・・・」

ポツリと話し出す久保田の声に時任が耳を傾ける

「いつか・・・どこかで見た、野良猫みたいに・・・死んでいくんだって・・・それで良いって・・・思ってた・・・」

ぼんやりと虚空を見つめ呟く久保田の声を、時任はただ黙って聞いていた

「けど、・・・お前と出会って・・・一緒に過ごすうち・・・毎日が楽しくて、・・・このままずっと一緒にいれたらって・・・そう、思うようになってた・・・」

久保田は時任を見つめると柔らかく微笑んだ

「俺の中で・・・お前との時間が・・・いつの間にか、かけがえのない・・・大切なものになってた・・・」

久保田は時任を真っ直ぐ見つめ、大切そうにその名を呼んだ

「時任、ありがとう」

「久保ちゃん・・・っ!」

時任は溢れる涙を腕で拭いながら
、久保田の身体を抱きしめる手に力を込めた

「久保ちゃん、・・・・・・・・・ごめん。」

時任の謝る理由が分からなくて、久保田は次に続く言葉を待つ

「折角、久保ちゃんが救ってくれた命だけど・・・俺も、連れてって」

言葉の意味を理解した久保田は困ったように笑った

「お前には、生きてて欲しかったんだけどね・・・」

だが、時任は首を横に振る

「久保ちゃんがいないこの世界で、俺一人生きて、どうしろっていうんだよ!?ずっと、・・・ずっと一緒だって言ったじゃんか!」

真っ直ぐ見つめてくる時任の瞳には強い意志が宿っており、観念したように久保田は小さく息をついた

「そうだね、一緒に逝こうか」

久保田の返事に頷いた時任は、落ちていた銃を拾いそれを自らの腹に向ける

「そこでいいの?痛いかもよ?」

「うん。久保ちゃんと同じ場所がいい」

「分かった。いくよ?」

「うん」

時任の手に自らの手を重ねた久保田はゆっくり引き金を引いた



ドンッーー



「ぐっ・・・!」

激しい音とともに銃弾をその身に受けた受けた時任は、久保田に覆い被さるようにして前のめりに倒れた

「時任、・・・大丈夫?」

久保田が声をかけると、かろうじて意識を取り戻した時任が身体を起こそうとする

「ん・・・悪ぃ、久保ちゃ・・・っ!!」

だが襲ってくる痛みに思わず顔を歪ませて荒く息をつく

「いいから、そのままもたれ掛かってなさい・・・」

「ん、ありがと・・・ってか、久保ちゃん・・・こんな痛ぇの、我慢してんのかよ・・・っ」

腹部の焼けつくような痛みと苦しさに時任は身体を震わせた

「俺は、・・・もうほとんど、感覚無いからねぇ」

「そう、なんだ・・・」

「辛い?」

「ううん・・・久保ちゃんと一緒だから、平気・・・」

もたれ掛かったままの時任が久保田の胸に耳を当てて目を閉じる

「久保ちゃんの、・・・心臓の音が聞こえる・・・すげー、ゆっくりだけど、な・・・」

「そうだね、・・・」

時任を胸に抱き久保田は微笑んだ



こんな最後も悪くないーー・・



「久保、ちゃ・・・なんか・・・すげぇ・・・眠た・・・」

意識が朦朧としかけている時任の頭を撫で、久保田はその唇に軽く触れるだけのキスをした

「いいよ・・・そのまま、眠って・・・俺も・・・そろそろ、みたいだし・・・」

「久保ちゃん・・・ありがとな・・・」

時任は久保田に笑顔を向けると、そのままゆっくりと目を閉じた

「うん、・・・俺の方こそありがとう・・・おやすみ、時任・・・」

時任の身体から完全に力が抜けると同時に、久保田も辛うじて保っていた意識を手放した



ーーー久保ちゃん!これからもずっといっしょだぜ?

ーーーうん、ずっとね



重なるようにして抱き合ったまま息を引き取った久保田と時任の顔は、幸せそうな満ち足りた笑顔を浮かべていた





fin.
〈/font〉

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