WILD ADAPTER(久保田×時任)
みんなでカラオケに行こう (荒磯執行部)

最近どことなく久保ちゃんの元気がない

どこが、ってわけじゃないんだけどただ時折どこか遠くを見てるっていうか、心ここにあらずっていうか

けどきっと理由を聞いたってはぐらかされるだけだから、何も聞かない

悩みがあるなら言ってくれればいいのに・・・

俺、そんなに頼りないのかな?





「ねぇ!今日、この後皆でカラオケに行かない?」

テストが終わり、執行部の仕事もあらかた片付いたので帰ろうと荷物をまとめていると桂木が声を上げた

「なんでまた急に・・・」

「だってテストも終わったんだし気分転換したいじゃん?だからカラオケ!」

「だからっていきなりカラオケかよ」

「いいじゃん、たまには!ね?」

桂木の突然の提案だったが、皆テストから解放され気晴らしをしたいのも事実で、結局執行部のメンバーはカラオケに行くことにしたようだった

「もちろん時任も来るでしょ?」

「えっ、俺は・・・」

ちらりと久保ちゃんを見ると目が合った

「おっ、おう!俺も行く!んで、もちろん久保ちゃんもな」

「ちょっと時任、なに勝手に決めてるの」

ジト目で見てくる久保ちゃんの視線が痛いけど気にしない気にしない

ここんところ元気なかった久保ちゃんも、カラオケとか行けばいい気分転換になるんじゃないかなー?とか思ったのは本人には内緒

とにかく俺ら二人と執行部のメンバーで学校近くのカラオケに繰り出した





「久保田くん、次曲入れてね」

桂木が久保ちゃんにリモコンを回すと、最初から歌うつもりがなかったのか久保ちゃんは「俺はいいや」と言ってそのまま俺に回すからちょっとムッとした

「なんだよ、久保ちゃん。折角来たんだから歌えよな」

「お前が無理矢理連れてきたんでしょーが」

「だって久保ちゃんの歌ってるとこ見てみたいじゃんかー」

時任の言葉に他の執行部メンバーも同調する

「私も久保田くんがどんな曲歌うのか聴いてみたい」

周囲からの強い勧めに逆らえなかったのか、渋々といった様子で久保ちゃんがリモコンを手に取った

入れた曲は『白昼夢』ってタイトルの曲で少しゆったりしたバラードだった

久保ちゃんの普段とは違うちょっと低めの、それでいてよく通る声に俺を始め執行部のメンバーは思わず聞き入っていた

(・・・あれ?でもこの曲の歌詞ってなんか・・・)

しばらく聞いていた時任がふと違和感を感じたのは曲がサビに入る手前辺りだった

久保ちゃんが歌いながら見せた表情はどこか寂し気で、痛みを隠しながら歌っているように思えた

(久保ちゃん・・・?もしかして・・・)

歌詞の内容と歌っている顔を見ながら、時任はここ数日様子のおかしかった久保田の真意を悟った

歌が終わって皆が拍手する中、久保ちゃんの表情はもういつも通りに戻っていて・・・たいして興味無さそうにマイクを置いた

「久保ちゃん、こんな歌いつ覚えたんだよ?」

「んー?ちょっと前かな。たまたまラジオでかかってるの聴いてね、なんか覚えたくなって」

歌う機会が来るとは思わなかったけど、と苦笑する久保ちゃんに何故だかちょっと腹が立って、俺は「ふーん」とそっけない態度を返した

「次、時任の番だよ」

桂木に声をかけられて俺はマイクを握った

曲は『常夜灯』

曲のイントロが流れ始める頃合いを見計らって久保ちゃんの腕を引っ張り耳打ちをした

「これが俺の答えだから」

俺の言葉に目を見開く久保ちゃんを横目に、俺は今の精一杯の気持ちを歌に込めた





「どうだった?俺の曲」

歌い終わった俺は久保ちゃんを連れて部屋の外に出た

「・・・上手かったよ?」

「んなこと聞いてんじゃねーの!俺の気持ち伝わったか?って聞いてんだよ」

俺の言葉に珍しく照れた表情の久保ちゃんが小さく頷いた

「ここ最近、久保ちゃんの元気無かった原因がやっと分かったぜ。俺がいつかお前の前からいなくなったらって考えてたんだろ?」

俯いて目を逸らす久保ちゃんの顔を両手で包んで真っ直ぐ見つめた

「ったく、なに勝手に決めつけて勝手に落ち込んでんだか」

「気付いてたんだ・・・」

「当たり前だろ。どれだけお前のこと見てると思ってんだよ。ただ、理由までは分かんなくてモヤモヤしてたけど」

「ごめんね?」

困ったように笑う久保ちゃんにそれ以上怒れなくて

(結局、原因は俺だしなー)

「本っ当、久保ちゃんは俺がいないとダメダメだなー」

「うん。そうみたいね、、、」

そんなところを可愛いと思ってしまう俺はすでに重症だろうか

「俺は、お前を置いていなくなったりしないから!ちゃんと俺を信じろ」

「うん、ありがとう。時任」

やっといつもの久保ちゃんに戻ったみたいだな

「じゃ、そろそろ戻るか!」

「そうだね」





「二人ともどこ行ってたのよ?」

「あー、ちょっと野暮用、みたいな?」

桂木の詮索を逃れるため俺は次に入れる曲を探し始めた

「久保ちゃん、次一緒に歌おうぜ!なんだっけ?この前ドラマで流れてた・・・ワンなんとかってやつ」

「wandering、ね」

「そうそれ!あの曲俺好きなんだよなー。なんか歌詞が切なくて、ぐっとくるっての?ドラマにもピッタリでさー」

その後、俺と久保ちゃんは執行部のメンバーとカラオケを存分に楽しんだ

たまにはこういうのも良いかもしれない

「楽しかったな!」

帰り道、隣に並んで歩く久保ちゃんの顔を覗き込んだら「そうだね、」と笑顔を返され、ドキッとしたことは心の内にそっと秘めておこうーーー





fin.


[*前へ][次へ#]

[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!