鋼の錬金術師(ロイ×エド)
お節介

この日、報告書を出すために僕たちはイーストシティに向かっていた


だけど駅に着くなり兄さんが熱で倒れちゃって、僕は慌てて近くの宿を探す羽目になった


幸い宿はすぐに見つかって、ベッドに兄さんを寝かせたんだけど想像以上に熱が高くて…


苦しそうにしている兄さんを見ていると出来ることなら代わってあげたいと思う


そんなとき、兄さんが微かに「大…佐…」と呟く声が耳に入った







普段会えば憎まれ口ばかり叩いている兄が、あの黒髪の上官のことを少なからず思っていることには気付いていた


そしてその上官が兄のことを好意的に見ていることも…


お互いに想い合っているのに、それに気付かない2人をアルフォンスはじれったく思った


(兄さんってば本当、素直じゃ無いんだよなー)


アルフォンスは寝ているエドワードを残し、1人で東方司令部に向かった







「こんにちは。あの、大佐います?」


「あらアルフォンス君、いらっしゃい。大佐なら執務室よ」


「そうですか、ありがとうございます」


リザに礼を言ってアルフォンスはロイの執務室へ向かった


執務室の扉をノックすると、中から「入れ」と声が掛かる


「こんにちは」


「やあ、帰っていたのか…おや?鋼のが見えないようだが」


まさか背が低くて見えないということはあるまい、と本人が聞いたら確実に怒るであろうセリフを吐きながらロイはアルフォンスの後ろを見る


「あの、そのことなんですが、兄さん今風邪引いて宿で休んでるんです」


「風邪?それで、鋼のは大丈夫なのかい?」


「はい。熱はまだ高いですけど2、3日寝てれば良くなるってお医者さんが…」


アルフォンスの言葉にそうか、と呟いたロイの表情からロイがエドワードのことを心配しているのが伝わってきた


アルフォンスは、そのロイの様子を見て覚悟を決めた







「大佐、もし良かったら兄さんに会いに行ってあげてくれませんか?」


「もちろん構わないが、鋼のが嫌がるのでは無いかね?」


彼は普段、人に弱みを見られることを極端に嫌う、特に風邪で寝込んでいるところを私に見られたくは無いだろう


そんなことをロイが思っていると、アルフォンスがポツリと呟いた


「兄さん言ったんです。熱にうなされながら“大佐”って…」


「っ!?鋼のが、私を…?」


「小さく一度きりでしたけど、僕にはちゃんと聞こえました。兄さん素直じゃないから絶対認めないけど、本当は大佐のこと…」


そこまで言ってアルフォンスは真っ直ぐロイを見た


「大佐、大佐は兄さんのことどう思っているんですか?」


アルフォンスの質問にロイは一瞬たじろいだ


まさか、弟の口からこんな質問が飛び出すとは思っていなかったからだ


“兄のことをどう思っているか”


それはロイがエドワードのことを恋愛対象として見ているのかを聞いていた


ロイはアルフォンスを真っ直ぐ見つめ返し静かに告げた


「私は彼を、鋼のを愛している」


「そうですか、それを聞いて安心しました。あなたになら兄さんを任せられる」


「アルフォンス…」


「ただし!兄さんを泣かせるようなことがあったら許さないですから」


「ああ、もちろんだ」


アルフォンスの言葉にロイは力強く頷いた







ガチャ――‥


「ん、アル?」


扉が開いた音で目を覚ましたエドワードは、まだぼんやりとした頭で弟の名前を呼んだ


不意に額に冷たい感覚を感じて目を開けたエドワードは驚く


「大佐!?なんでここに…」


「君が風邪で寝込んでいると聞いてね、まだだいぶ熱があるみたいだが気分はどうだ?」


「…大丈夫」


エドワードの返事にロイはそうか、と言ってベッドの側を離れようとしたが、不意に引っ張られる感じがして振り返った


するとエドワードが服の裾を引っ張りながら、不安そうな顔でこちらを見上げていた


「水を取りに行くだけだよ。すぐ戻ってくるから」


優しく微笑みながらエドワードの手を取って布団の中に入れてやる


するとエドワードは恥ずかしくなったのか、頭から布団を被ってしまった


その姿に苦笑しながらロイは部屋を後にする







「起きれるかい?」


手を添えてエドワードが身体を起こすのを手伝う


水を飲ませて横にならせるとエドワードがロイをジッと見つめてきた


「何だい?」


「大佐が優しいから何かあるんじゃないかと思って…」


「失礼だね、君は」


ロイが少しムッとするのを見たエドワードは「悪い、」と言って笑った







「ところでご飯は食べたのかね?」


「まだ。さっきまで寝てたし」


「なら、お粥を頼んでくるから少し待っていなさい」


(なんか大佐が俺に優しいなんて変なの…でもちょっと嬉しいかも///)







「鋼の、お粥を貰ってきたが食べれそうかい?」


ロイの言葉にエドワードは身体を起こす


「食べさせて」


エドワードがアーンと大きく口を開ける


「…仕方がないな、ホラ」


ロイがスプーンですくってお粥を食べさせる


「熱い」


お粥を一口食べたエドワードが呟いた


ロイは今度はスプーンですくったお粥に2、3度息を吹き掛けて冷ましてから食べさせた


「うん、美味しい」


「そうか、」


そう言いながらエドワードを見つめるロイの眼差しは優しかった







「少し休みなさい」


ご飯を食べ終わったエドワードにロイが言うとエドワードは少し寂しそうに「でも…」と呟いた


この子供は素直に甘えたり、我が儘を言ったりしない。きっとこれがこの子の精一杯なんだろうと思うと愛しさが込み上げてきた


「大丈夫。ここにいるから、少し眠りなさい」


ロイがそう言うとエドワードは嬉しそうに頷いた







しばらくしてロイが熱を計るため、エドワードの額に手を置くとエドワードが目を開けた


「すまない、起こしてしまったね」


「大佐の手、冷たくて気持ちいい…」


「そうか」


ロイが片方の手をエドワードの額に置いて、もう片方の手で髪を梳いてやるとエドワードは気持ち良さそうに目を細めた


「もう少しお休み、鋼の」


「…うん」


エドワードはロイの体温を感じながら押し寄せる眠気にその身を預ける





「愛しているよ、エドワード」





眠りにつく間際、ロイの声が聞こえたような気がした







「ん…うわっ!大佐!?」


目が覚めたエドワードは自分の布団に頭を預けて眠っているロイを見て驚いた


「…鋼の…?目が覚めたのか、熱はどうだい?」


そう言ってロイが自分の額をエドワードの額に当てるとエドワードは途端に赤くなった


「っ、もう下がったって///」


「おや、まだ顔が赤いな。熱は…無いようだが」


(ったく、誰のせいだと思ってんだよ…)







「熱が下がって良かったな」


「おう、…ありがとな」


「どうした?珍しく殊勝じゃないか。まだ熱でもあるんじゃ…」


「なっ!折角、人が礼言ってやってんのに」


「ははっ、それだけ元気があれば大丈夫だな」







「そういえば何で大佐がここにいるんだよ?」


「アルフォンスが教えてくれたんだよ。君が熱を出して寝込んでいる、とね」


「アルの奴が?」


エドワードは何故アルフォンスが司令部に行ったのか不思議に思ったが、ブラックハヤテ号と遊びたかったのだろうと勝手に結論付けた


「アルフォンスに嬉しいことを聞いてね」


ロイがエドワードを見て小さく笑った


「何だよ、嬉しいことって」


「君が熱に浮かされながら私を呼んだ、と…」


「っ!呼んでねぇ!!テメエなんか呼ぶ訳ねぇだろ///…ア、アルの聞き間違いだっ!」


ロイの言葉にエドワードは真っ赤になって必死に抗議する


「いや、小さかったが確かに『大…佐、』と呼んだそうだ」


柔らかく笑うロイを見て、エドワードは恥ずかしくなりそっぽを向いた







「鋼の」


ロイの呼び掛けにもエドワードは黙って横を向いていた


「鋼の、こっちを向いてくれないか?」


ロイが困ったように言ってきたのでチラリとそちらを見た


すると、意外にも真面目な顔で自分を見ていたのでエドワードは少し驚いた


「鋼の」


「…なんだよ」





ギュッ――‥





「わっ!」


突然エドワードはロイに抱きしめられた


「愛している」


「えっ、ちょっ、大佐!?」


エドワードはあまりのことに驚いて動けずにいた


「エドワード、君を愛している」


もう一度言われた言葉にに、エドワードは戸惑いながらもおずおずとロイの背中に手を回した


「…俺も」


それはとても小さな呟きだったけれど、ロイの耳にはしっかりと届いていた


「エドワード…」


そして2人はそのままキスを交わした







「アルフォンスに君のことをどう思っているか聞かれたよ」


「アルに?んで、アンタは何て答えたんだよ」


「もちろん、君を愛している、と答えたさ」


ロイの発言にエドワードは飲んでいた水を吹き出しそうになった


「ッ…ゴホッ、ゴホッ…アンタ、何考えてんだよっ!」


「何って本当のことを言ったまでだが?それにアルフォンスは気付いていたよ」


「…」


「アルフォンスに君を泣かせるようなことがあったら許さない、と釘をさされたよ」


「アルのやつ、余計なことを…」


そう言いながらもエドワードは内心嬉しいと感じていた


「もちろん、私だって君を泣かせるような真似などするつもりはないがね」





君を、一生大切にするよ――‥





耳元で囁かれた言葉に真っ赤になる


「…絶対だからな」


照れ臭そうにエドワードはロイの胸に顔を埋める


けれどその顔は幸せそうに微笑んでいた――‥





            fin.




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