鋼の錬金術師(ロイ×エド)
親としての想い(親子パロ)

何故、急に養子を貰おうなどと思ったかは実のところ自分でもあまりよく分からない


私はまだ若く、結婚相手もいないしどちらかというと子供も好きではない


それが、ある日たまたま施設の前を通り掛かったところあの子を見つけた


綺麗な金色の髪を三つ編みにして走る姿を見ているうちに、私はあの子と一緒に暮らしたいと思うようになった


それから何度か施設を訪ね、彼―エドワードとも仲良くなった


そして私は正式にエドワードを養子として家に迎えた







最初は緊張していたエドワードも今ではすっかりこの家に馴染んだようだ


そればかりか、家事があまり得意ではない私の代わりにエドワードが家事全般を引き受けてくれた


エドワードが家に来てからというもの、私は外食をしなくなった。女遊びも一際やめた


ハボックには「大佐、ヒューズ中佐のこと言えないっスよ?大佐も十分親バカで過保護ですから」などと言われたりもしたが…







その日は珍しく定時で仕事が終わり、私はいつもより早く家に帰った


玄関の扉を開けるとエドワードの靴が無い


いつもなら学校が終われば真っ直ぐ家に帰って夕食の支度をしているはずだ。しかし家に帰った形跡も無い


大方、友達と遊んでいるか寄り道をしているかだろうとは思ったが、やはり心配だ


私はリビングのイスに座ってエドワードの帰りを待った







ガチャ――‥


時計の針が7時を差した頃、ドアが開く音がして、ロイは急いで玄関まで向かった


「エドワード!?」


「あっ、うん…ただいま」


エドワードはバツが悪そうに目を逸らした


「今何時だと思っている。学校が終わるのは何時だ?こんな時間までどこで何をしていた!」


つい、尋問するような口調になってしまった


エドワードはそれにムッとすると、別に、と答えた


「確かに連絡しなかったのは悪かったけど、俺が何しようがアンタに関係無いだろ」





パンッ――‥





思わず私はエドワードの頬を叩いていた


「…ッ痛ぇ」


エドワードはそのまま私を睨み付けると外へ飛び出して行った







ドンッ――‥


「…っ」


苛立って壁を殴った


決して手は出すまいと決めていたのに…


「エドワード…」


私はエドワードを探すため、外に出た


周りを見回すがエドワードの姿は無い


ふと近くに公園があるのを思い出し、そこへ向かった







公園の石段にエドワードの姿を見つけたロイが「エドワード、」と声を掛けるとエドワードは驚いて立ち上がり、逃げようとした


「待ちなさい!」


「っやだ!離せっ…離せよ!!」


ロイの手を振り払った瞬間、エドワードの身体がぐらりと後ろに傾いた


「エドワードっ!!」


ロイは咄嗟にエドワードを胸に抱え込み、そのまま石段を数十メートル下へ転がり落ちた







「うっ…」


目を開けると目の前に石段がぼんやり見える


起き上がろうとするが、全身と頭に激痛が走りロイは小さく呻く


頭に手をやると真っ赤な血がべっとりと付いた


(どうりで視界がぐらつく筈だ…さすがにこのままではやばいかもしれんな)


「エドワード、大丈夫か?」


ロイが腕の中のエドワードを軽く揺すると、エドワードはゆっくりと目を開けた


「ん…ロイ…俺は大丈夫…」


「良かった…」


多少の打撲はあるだろうが、とりあえずの無事を確認してロイは安堵の息を漏らす







自分を見上げるエドワードの頬が少し赤くなっているのに気付き、ロイは片手で赤くなっているところを撫でる


「痛かっただろう?」


その言葉にエドワードは俯く


「でも、悪いのは俺だし…」


「私の想いは、君の負担になってしまっているのかい?」


「そんな事っ…」


その言葉にエドワードは勢いよく顔を上げた


「でも、これだけは分かってほしい…私は君のことが大切なんだ。大切で、愛しくて仕方がないんだよ」


そう言ってロイが抱きしめると腕の中のエドワードはうん、と小さく答えた


「エドワード、愛しているよ…ずっと…ずっと…」


そう呟き、ロイはそのまま意識を手放した







急に黙ってしまったロイを不審に思い、エドワードはロイの身体を軽く揺する


「ロイ?どうしたんだよ」


尚も返事が無いことにエドワードは焦った


「おい、ロイ!しっかりしろよ」


起き上がってエドワードは愕然とする


ロイは頭から血を流してぐったりとしていた


「ロイ…?嫌だ…ロイ…なぁ、…死んじゃ嫌だ…俺を一人にしないでっ…ロイ――‥」







目が覚めて最初に見たのは泣きそうな顔をした愛しい子供だった


「ロイ…良かった…っ俺、ロイがいなくなったらどうしようって…怖くて」


「心配をかけたね」


よほど不安にさせてしまったんだろう、優しく微笑んでやると、泣きながらガバッと抱き着いてきた


その様子にも愛おしさを覚え、ゆっくりと髪を梳くように撫でる


「私が大切な君を残して死ぬわけが無いだろう?」


「本当…?」


その言葉にエドワードはゆっくりとロイを見上げる


「ああ、本当だよ」


エドワードの目に溜まった涙を指ですくいながらロイは誓った





私は絶対にこの子を一人にはしない、


この子が成長するまで親として時に厳しく、時に優しく、見守り育てよう、


神様が私に巡り会わせてくれたこの太陽のような子供を――‥





            fin.




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