鋼の錬金術師(ロイ×エド)
理不尽な要求

エドワードは賢者の石についての情報をもらう―そして恋人のロイの顔を見る―ために東方司令部を訪れた


「こんちわー、大佐いる?」


「あらエドワード君、お帰りなさい」


エドワードの姿を見ると、みんな“お帰りなさい”と言ってくれる


その事を嬉しく思いながらも、照れ臭くて態度には出せないでいるエドワードだが、ロイもここのみんなもそれを分かっているので温かく迎えてくれる







ロイの執務室に入ると、ロイが仕事の手を止めて顔を上げる


「久しぶりだな、鋼の」


ロイはいつもそう言って優しく微笑むのだ


「おう、何か新しい情報無いのか?」


「全く、君はいつもつれないな」


ぶっきらぼうなエドワードの答えに苦笑しながらも、調べてあった石の情報を渡す


「サンキュー大佐!」


途端に嬉しそうな顔をするエドワード


それを見たくてロイは忙しい合間を縫って石の情報を調べるのだ


「んじゃ、俺資料室行ってくるから」


エドワードは用事だけ済ませると、とっとと執務室を出ていってしまった


エドワードとてロイと一緒に居たくない訳は無いのだが、どこと無く落ち着かず結局早々と執務室を出てしまうのだ







エドワードが廊下を歩いていると後ろから声を掛けられた


「おや?君は確かマスタング大佐んとこの鋼の錬金術師君だったね」


振り返ると、以前セントラルで会ったことのある人物だった


「えっと、確か…ビネガー中将?」


「おや、よく覚えていたね。そうだ、今から一緒にお茶でもどうかね?」


ビネガーは権力を盾にセントラルでも大きな顔をしているような奴で、その下品な笑い方といい、エドワードの嫌いなタイプだったが、立場上その誘いを無下に断るわけにもいかずお茶の誘いを受けた


話を聞くとビネガーはロイの仕事ぶりを東部の視察も兼ねて、1週間ほど見に来ているのだそうだ―平たく言えば上層部のお偉いさん方の暇潰しだ―


なるほど、どうりでロイが疲れたような顔をしていた訳だ。きっと事あるごとに嫌味を言われているのだ


そんなのが1週間も続くなんてたまったもんじゃない。明日帰ると言っていたから、かれこれもう6日間はそんな状態なのだろう


エドワードは少しだけロイに同情した


エドワードがそんな事を考えているといつの間にかエドワードの後ろに来ていたビネガーに肩を掴まれた


「君、なかなかいい身体してるね」


下卑た笑いを浮かべながら、エドワードの身体をなめ回すように見る


そこでエドワードは、この男がなんで自分を誘ったかに初めて気が付いた


「どうだね?私の相手をしてくれないか?」


先程、お茶に誘った時と同じように誘う


違うのは、その内容と重圧感


ここで抵抗すれば自分の後継人であるロイに迷惑が掛かると、エドワードは我慢していた


黙ってるのをいい事に、ビネガーの手は頬、顎、鎖骨、胸、脇腹とどんどん下がっていき、ついにエドワードの下肢へと触れた


その瞬間、エドワードの我慢の限界が切れた――‥


「ふざけるな!この変態ジジイが!!」


ビネガーを突き飛ばしイスから立ち上がって怒鳴る


ハッと我に返った時には既に遅く、顔を真っ赤にして怒ったビネガーの姿が目の前にあった







直ぐさまロイが呼ばれ、部屋には緊張の面持ちのロイと、イスに座って不機嫌そうに眉をしかめるビネガーと、俯いて立ったままのエドワードの姿があった


「この度は鋼の錬金術師が無礼を働き、誠に申し訳ありませんでした」


ロイはイスに座ったビネガーに深く頭を下げた


「彼はこのようにまだ未熟な子供です、今回の事は全て躾が至らなかった私の責任です。どうかお許し下さい」


エドワードは、ロイが自分の為に下げなくてもいい頭を下げなければいけないのが悔しかったが、これ以上ロイに迷惑を掛けない為にも反論したい気持ちをぐっと堪え頭を下げた


「申し訳ありませんでした」


それに満足したのか、ビネガーはふんっと鼻で笑って口を開いた


「まぁワシも冗談にしては少し戯れが過ぎた」


その言葉にエドワードは苛立った


あれは決して冗談などでは無かった、抵抗していなければ確実にヤられていただろう


「しかし、責任は取ってもらわないと…なぁ?マスタング大佐」


ビネガーは嫌な笑みを浮かべ、ロイを見た


「はい、勿論です」


「私はビネガー中将と話があるから下がっていなさい」


「でもっ…!」


「下がりなさい」


エドワードに冷たく言い放ったロイの目には、何の感情も浮かんではいなかった


エドワードはビネガーにもう一度頭を下げて部屋を出ると、重い足取りでロイの執務室へ向かった







執務室のソファーに座りながらエドワードは先刻のロイの表情を思い出す


今までエドワードはロイのあんな表情を見たことが無かった


どこまでも暗く冷たい、深い闇のような瞳には自分の姿など映っていなかった


自分はあの時どうすれば良かったのか…


大人しくされるがままになっていれば良かったのか?


いや、少し触られただけで虫酸が走るほど嫌だったのだ、我慢出来るはずが無い


出口の無い迷路を迷い歩いているような感覚に捕われながら、エドワードはロイが帰ってくるのをじっと待った







「さて、マスタング大佐、分かっているんだろう?彼は君にとって大切な存在みたいじゃないか。彼にこんな事はさせたく無いのだろう?だったら…」


「分かっています…」


ビネガーの言葉を遮るようにロイが言う


「安心しろ。流石に君に挿れるとは言わない、ただ奉仕してくれればいいんだ」


簡単なことだろう?と言ってビネガーは前をくつろげて一物を取り出す


「ほら、そこに膝をついて舐めろ」


床を指差し、ビネガーは下卑た笑いを浮かべる


ゆっくりと床に膝をつき、ロイは両手でビネガーのモノを掴む


眉間を寄せながらも、目を閉じてそれを口に含んだ


無駄に大きいだけのソレに器用に舌を這わせれば、感じているのか頭上からは荒い息遣いが聞こえてきた


(エドワードは今頃どうしているだろうか…さっきは酷く傷付いた顔をしていたからな)


(それにしても気持ちが悪い…エドワードのはあんなに美味しいのに、コイツのときたら臭くて不味い…最悪だな)


(ああ、でも彼がこんな思いをしなくて済んで本当に良かった…)


ロイは目を閉じ、そんな事をぼんやり考えていた


「はぁ…くっ…マスタング大佐…ッそろそろ…あっ」


その声に現実に引き戻されたロイは、ビネガーの要望通りに与えていた刺激を強くした


「くっ…」


ドピュッ――‥


低い呻き声とともにロイの口内に熱い精液が注ぎ込まれた
 
 
ロイはその衝撃と独特な匂いに思わず吐きそうになったがなんとか堪えた


するとそれを見ていたビネガーは、ニヤニヤしながらロイの髪を掴んで上を向かせ、「飲め!」と命令した


「…」
 
 
ゴクンッ――‥


その様子に満足したビネガーはロイの髪を掴んでいた手を離しズボンを履き始めた


「もう良いぞ、今後はこのような事が無いよう、しっかりとしつけておきたまえ」
 
 
「…はい。大変申し訳ありませんでした」


ロイは立ち上がり、居住まいを正して一礼した


下がっていいぞ、というビネガーの声がやけに耳に響いて頭が痛くなった
 
 





廊下を歩いていたロイは急な吐き気に襲われ、近くにあったトイレに駆け込んだ


ゲホッ――‥


「…ッ…ハァハァ…うっ…ゲホッゲホッ…ハァ」
 
 
昼から何も食べていないため、吐くものなど何も無く、ただ胃液ばかりが上がってくる


それでも吐き気は一向に収まらず、ロイはしばらくその場から動けずにいた
 
 
だいぶ吐き気も収まり、ようやく動けるようになったのはそれから1時間程後だった







ふらつく足取りで執務室まで行きドアを開けると、中は真っ暗でソファーにポツンと座っているエドワードの姿があった
 
 
「鋼の?」


側まで行って肩に手を置き、優しく呼ぶとゆっくりロイを向いた


「大佐…ごめん…俺…迷惑かけて」
 
 
俯いて辛そうな表情で謝るエドワードをロイは優しく抱きしめた


「君が謝ることは無い。悪いのは君じゃない…それよりも君が無事で良かった」


ロイの心底安心した声音にエドワードも肩の力を抜く
 
 
「大佐…すげぇ疲れた顔してる」


エドワードはロイを見上げ、その顔を手で触る


そして、そのままロイの唇に自分の唇を近付ける
 
 
「すまない、今はそんな気分では無いんだ」


エドワードの唇がロイの唇に触れる瞬間、ロイはエドの身体をやんわり自分から離した
 
 
エドワードはその行動に驚きを隠せなかった


今までロイは一度だってエドワードのキスを拒んだことなどなかったのだ


むしろ照れ屋なエドワードが自らキスをすることは滅多にない為、した時にはロイはとても嬉しそうにするのだ
 
 
エドワードがロイの行動に戸惑っていると、突然ロイが口元を押さえ早足に部屋を出て行った


慌てて後を追うと、トイレで苦しそうに身を屈めているロイの姿があった
 
 
明るいところで見るとロイの顔は蒼白で、酷く体調が悪そうだ


額に手を当ててみるが、熱は無い、きっと精神的なストレスなのだろう


そう思ったところでエドワードはハッとする
 
 
「アンタ、まさか…俺の代わりに…?」


何も言わないロイを見てエドワードは確信する


「そんな…俺のせいで…ごめん…ッ…ごめん」


エドワードの目から涙が零れた
 
 
「さっきも言ったが、君が謝る必要は無い…。私は、君がこんな思いをしなくて済んで本当に良かったと思っているんだ。君を守る為ならこれぐらいたいした事では無い…だからそんな顔をするな」


ロイはエドワードの頭に手を置き、困ったように笑った


「…うん」
 
 
短く返事をした後、エドワードはいきなりロイの唇にキスをした


今度はロイが拒むヒマも無かった


ロイが呆気にとられているとエドワードがニコッと笑った
 
 
「じゃあさ、これで半分コな?」


不思議な事にさっきまでの吐き気や気分の悪さは嘘のように消えていた







            fin.




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