蛇足
始まらないカレー制作
「気にいらねぇもんは気にいらねぇんだよ!」
「っ?!」
よしおから突然発せられた怒鳴り声に楓は彦星の腕の中でびくりと体を震わせた。
そしてそれと同時に周りで寝ていたクラスメイト達も次々とその怒声で目を覚ましてしまったようだ。
“気に入らない”
気に入らないとはもしかしてもしかしなくても俺達の事だろうか。
楓は頭の片隅に浮かんだ自分の考えに頭を抱えた。
この状況から考えて100パーセントの確率でそうだろう。
やはりこの体制はよしお的に見てらんねぇぜコノヤローなレベルだったようだ。
そこまで見苦しかったなんて……
そう軽く落ち込みながら恐る恐る顔を上げると楓は再度体をびくつかせた。
よしおがこちらを睨みつけている。
それはもう親の敵でも見るように
しかも楓だけを。
怖い…怖すぎる…!
楓は自分をひたすら睨みつけてくるよしおに思わず掴んでいた彦星の腕を握り締めた。
するとそれを見たよしおは更に鋭い視線を楓へと向ける。
そんなよしおの鋭い視線に堪えきれず、楓はとっさによしおから目を逸らした。
その瞬間。
よしおはその顔に苦しげな表情を浮かべた。
楓から目を逸らされる。
たったそれだけの事によしおは内心ひどく重苦しい気持ちになっていた。
しかし目をそらした楓には、その痛みを伴ったよしおの表情を視界に入れる事はなかった。
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