蛇足
三人でカレー制作?
「じゃあさ……彦星、こうしようか?」
楓が声をかけると彦星はゆっくり顔を上げた。
「俺はこれからも毎朝彦星を起こしに行く。だけど俺が起こしに行って彦星がすぐ起きなかったら……その時はもう知らないからね?」
「楓……毎日起こしに来てくれるの?」
「うん。でも今日みたいにすぐ起きなかったら、俺は容赦なく先に学校行くから!」
「………うん!わかった!オレ楓が来たらすぐ起きる!オレ頑張る!」
楓の提案に彦星は嬉しそうに楓を強く抱きしめた。
そんな彦星の様子に楓は、うんうんと一人納得していた。
こんなに喜んじゃって
きっと彦星は親に朝起こされた事とかないんだろうな。
何やっても両親からは放置されっぱなしで寂しかったに違いないね!
だから朝一番に俺の顔が見たいなんて甘えが出てきたんだろう。
彦星……不憫
楓が可哀想に……と、はしゃぐ彦星の頭を再度撫でてやっていると突然隣からボトボトという何か落ちる音が教室に響いた。
楓が何事かと音のする方へ目を落とせば、そこには先程楓がよしおに手渡した食材の数々が散らばっていた。
あ、そういえば……
「よしお君」
楓が恐る恐るよしおの方に顔を向けると、そこには何やら眉間にシワを寄せてこちらを見つめるよしおの姿があった。
あぁ!またよしお君に変な所を見られてしまった……!
「ちょっ……彦星、そろそろ離れて」
「んー!何で?」
何でって……お前!
ほら、周りを見てごらん?ここは学校!公共の場!
男同士の抱き合ってる(っていうか一方的に抱きしめられてる)のは絵的に視界の暴力だから!
むしろこれは視界のリンチレベルだから!
「ほーら彦星ー?ここは学校だぞー?よしお君も見てるぞー?恥ずかしいよー?」
楓が彦星の腕の中でを懸命にもがくが彦星の体はビクともしない。
コイツ……!
見た目は細身の癖してどっからこんな力が出てくるんだよ!
「オレは全然恥ずかしくないし!いっつも玉泉院じゃやってる事じゃん!よしおは友達なんだから別に見られてもヘーキだろ?!」
彦星はそう言うと何やら得意気な顔でよしおを見つめる。
そんな彦星によしおは悔しそうな表情を浮かべると先程まで食材を持っていた手を一心に握り締めた。
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