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蛇足

「(それは……ねぇだろ)」

蛭池がそう考えるのには理由があった。

堀田彦星

いつも馬鹿発言で周りからは馬鹿だの純粋だのガキだのと言われているが………

彼はいつもの馬鹿発言からは想像できない程、無類の女好きなのである。

気に入った子がいれば行動は早く、その日にはお持ち帰りというのはザラだった。

一体どんな技を使っているかはわからないが、堀田彦星とはそういう男だった。

なんたって初体験が小学6年生の時なのである。

しかも近所でも可愛いと評判であった当時17歳の女子高生。


『池ちゃん!オレさっきエッチしてきた!』

そう言って今日と同じように蛭池の部屋に入ってきた彦星に、蛭池はただ驚く事しかできなかったのを覚えている。



そんな彦星が楓……男を好きになどなるだろうか。

いや、ないだろう。

蛭池は毎回そうやって、その可能性を打ち消してきた。


「池ちゃーん?おーい!」

彦星に目の前でそう叫ばれた瞬間、蛭池は瞬時に意識を覚醒させた。

「んぁ?何だ……彦坊?」

「だーかーらー!そーだんなんだってばー!」

「あ……あぁ、そうだったな、彦坊。そんで、相談ってーのは何だ?」

「えっとさー、さっきも言ったけどさ!オレずーっと楓の事ばっか考えてんの!なのにちょっと最近楓にイライラすんの!なんでかわかんねーけど!」

イライラ……
そう聞いて蛭池は少し安心した。

「(ムラムラするって言われたら決定的だったな、こりゃ)


イライラ?何でだよ?」

蛭池が尋ねると、彦星は難しい顔をして口を開いた。

「だってなー!最近楓、よしおとスゲー仲良くなってんの!」

「よしお……?……あぁ、最初に楓をパシろうとした奴か」

「そー!で、しかも楓の奴そのよしおと同じバイトしてんだって!マジでムカつく!」

そう言って心底悔しそうな表情を浮かべる彦星に、蛭池は内心複雑な心境であった。

「(そりゃあ……彦坊……ヤキモチだろ)」

蛭池の中でまたあの仮定が色濃くなった。

「オレの方がよしおより先に楓と仲良くなったんだ!楓はオレの大親友なのに……楓ムカつく!」

「なぁ、彦坊。楓の事ムカつくって言ってるがよぉ。その楓と仲良くしてるよしおって奴の事はどう思ってるんだ?」

蛭池の言葉に、彦星は一瞬キョトンとするとしばらく眉をひそめて考えだした。

「(さぁ、どうくる彦坊)」

しばらくして、彦星はゆっくり顔を上げると、グラサン越しにジッと蛭池の目を見つめた。

その目は普段の彦星からは想像も出来ない程冷たく凍てついていた。

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あきゅろす。
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