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蛇足

『(何だってんだよ)』

募る苛立ち。

しかし、よしおは何も答えない楓にただ訝しげな視線を送る事しかできなかった。




結局、バイトの面接は無事合格。

楓はバイト初めてという事もあり、まずは週3でシフトに入る事になった。

まぁ、一安心といえば一安心。

楓はバイト初日の日程と、軽い注意をよしえから受けて、やっとバイトの面接は終了した。

しかしここにきても尚、よしおは楓に対する苛立ちを抑えきれずにいた。

面接を終えた楓は先程よりはマシになったとはいえ、未だうっすらと顔を赤く染めている。

しかもよしえを見るたびに、だ。

その事実がまた更によしおを苛立たせた。


そして現在はというと、よしおはよしえに命じられ楓を送るというミッションを遂行中である。

楓は悪いからと何度も断ったが、それをよしえは頑として許さなかった。

『よし君しっかり楓ちゃんをお家まで送り届けるのよ』

そう言って笑顔を浮かべるよしえに、よしおも異議はなかった。

この時間帯(といってもまだ6時代)に、楓を1人で帰らせるというのはよしお自身不安を感じていた。

いくら楓がTSUTAYAでパシリやイジメの標的ではなくなったとはいえ、それは1年の中だけの話だ。

TSUTAYAの他学年や他の高校の奴など、楓にとっての脅威は多い。

楓がそれに応戦するだけの力を持っていれば何の問題もないのだが、楓は見た目同様喧嘩は全く駄目らしい。

そう楓が言っていた。

その為、よしおはもともと楓の事はきちんと送って帰るつもりであった。




無言の帰り道。

よしおは自らの中に居座る苛立ちに、チラリと隣を歩く楓を覗き見た。

楓はぼんやりとした顔で歩いているが、その顔は未だ微かに色付いていた。

「……いつまで顔赤くしてやがんだ、気持ちワリィ」

よしおが小さな声で呟くと、楓はハッとしたようによしおを見上げた。

「……俺、まだ赤い?!」

「……赤けぇよ」

よしおがそうぶっきらぼうに答えると、楓は手で顔を覆い「……有り得ない」と小さく呻いた。

「……つーか…お前面接ん時うちのババァと「これ以上そこはつっこまないでください!!」

楓は手で覆っていた顔をガバリとよしおの方へ向けると、勢いよく言い放った。

そんな楓の行動によしおは今までの苛立も加わり一気に頭に血が上った。

「(この野郎……)」

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