蛇足
彼は家事手伝い
「おい、バイト連れてきたぞ」
そう言って店に入ったよしおの背中を楓は慌てて追った。
すると、店に入った瞬間頭の中がクラッとする程の様々な花の香りが楓の鼻腔をくすぐった。
店内は外から見えていた通り花だらけである。
「あら、よし君?バイトの子が来るの……今日だったかしら?」
そんな花の中から一人のおっとりとした声の女性が、手に花を抱えて現れた。
感じのいい人だなぁ
花屋で働いてるっていうのが凄く似合う
それによし君って呼び方も凄く可愛い
幼なじみの女の子に呼んで貰いたい感じの呼び名だな、うん
……つーか、よし君かぁ
よし君?
よし君て……よしお君?!
は?!
楓が混乱のあまり勢いよくよしおに振り返ると、よしおはこめかみをヒクつかせながら女性を睨んだ。
「っのクソババァが?!そのよし君てのやめろよ!?キメェんだよ!!」
「よし君たら……そんな乱暴な言葉使っちゃ駄目だっていつも言ってるでしょう?もぅ。」
そう言って女性は手に持っていた花を地面に下ろした。
楓はただひたすらに目の前で繰り広げられる会話にポカンとするしかなかった。
……もしかして……この女の人…よしお君の……
「ごめんなさいね?よし君ちょっとだけ口が悪いの、気にしないでね?」
「………あ、はい」
いや、ちょっとじゃないだろ。
かなり口悪いだろ。よしお君は
楓がよしお相手にとことんマイペースに振る舞う女性に呆気にとられていると、女性はゆっくりと楓に近付いてきた。
「私はこのお花屋さんの店長の柳川よしえです。そしてよし君のお母さんでもあります。よろしくね?」
やっぱりぃぃ!
このマイペースウーマンよしお君のお母さんかよ?!
しかも名前よしえって……
名前の付け方が姉弟のノリだよ?!
目を見開いてよしえを見つめる楓に、よしおはバツの悪そうな表情を浮かべた。
しかし、そんな2人の様子など気にする事もなくよしえは楓に向かって話し続けた。
「それで、あなたがよし君のお友達でバイトの面接に来た子ね?いつもよし君が一緒にいる子達とはだいぶ雰囲気が違う子ねぇ。凄く小さいわ」
のんびりとした様子で放たれた一言に、楓は軽く弾道ミサイルを撃ち込まれたような衝撃を受けた。
“凄く小さいわ”
………
そりゃあお宅のお子さんと比べたら俺なんか小さいけど……
いや……うん小さいよ
俺
…つーか…それは雰囲気が違うっていうより、ぶっちゃけチビって事だよな……
いや、うんこれはかなりショックだ
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