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蛇足

楓がよしおの事で彦星をたしなめてから、今朝始めてよしおと彦星が対面した。

彦星の存在に気付いたよしおは途端に顔を真っ青にし、立ち尽くしてしまった。

いくら楓が言い聞かせたといっても、あの凍てつくような彦星の視線がそう簡単になくなるわけがないと思っていたよしおは彦星が現れた瞬間顔を俯かせた。

しかし、その瞬間彦星はよしおに近付くと「おはよ!」と笑顔で挨拶をして歩き去って行った。

よしおがその場にポカンと立ち尽くしていると、彦星の隣に居た楓がよしおに笑顔で駆け寄った。

『大丈夫だっただろ?』

楓のその言葉によしおはただ驚く事しかできなかった。

だってそうだろう。

先日まで会えば睨まれ教室では無言の圧力をかけてきた、あの存在が……楓のたった一言であそこまで態度を変えてきたのだ。

それ程にこの楓という存在が彦星に多大なる影響を与えているという事だ。

よしおは彦星に呼ばれて『じゃあまた』と走り去っていく楓の後ろ姿を見つめながら静かに息をついた。

俺はアイツに2度も助けられたんだな、と。

よしおは楓が見えなくなるまでジッと楓が走り去った方を見つめていた。



「ほ…堀田の所ならお前も安心なんじゃね?」

だからよしおは楓がバイトをすると聞いて真っ先にそれを提案した。

TSUTAYA学園のせいでこの近所及び地域全体は非常に治安が悪い事で有名であった。

そのため楓のような普通の、しかもか弱そうな奴がバイトをここらで探すというのはかなり危険であるとよしおは考えたのだ。

「(コイツをここで一人バイトさせんのは不味いだろ)」

そう思いよしおが楓を見下ろしてみると、なにやら苦い顔でこちらを見上げてくる楓とバチリと目があった。

その瞬間、よしおは何故か顔に熱が集中してくるのを感じとっさに顔を逸らす。

「(……っ?なんなんだよ、これは!?)」

よしおはこないだ楓と一緒に帰ったあの日から、困った問題を抱えていた。

それは


「よしおくん?」


そう言って心配そうに顔を覗き込んでくる楓に、よしおは更に顔を赤くした。

「(つーか!顔ちけぇだろ?!)」


楓と目が合わせられないという事だった。

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あきゅろす。
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