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蛇足

―――私立蔦谷学園。

目の前の校門には確かにそう記されていた。

楓はバスの中とはまた違う感覚で、その意識を手放そうとしていた。

「(嘘だ…嘘だ………嘘だ!!)」

楓は頭を抱えこんで校門の前に座りこんだ。
楓の前に広がる光景。
それは、にわかに高校とは信じ難い光景であった。

校舎のガラスのゆうに三分の一は割れて……いや破壊されており、更に校門の壁という壁には芸術的作品から下に至るまでさまざまな落書きが施されていた。

そうして極めつけが、その校門をくぐる生徒の種類である。

ここに入っていく生徒達は皆、揃いも揃って凶悪そのもの。

中学時代も、そしてこれからの高校時代もヤンチャしちゃいそーなヤツらばかりである。

そう、ここは地元でも……いや全国でも有数のワルの巣窟と言われる“私立TSUTAYA学園”であった。

「蔦谷学園っ………………?TSUTAYA学園?!蔦谷学園ってTSUTAYA学園?!嘘だろ?!」


余談

蔦谷学園は昔、入学希望者が皆頭が悪いという事もあり“蔦谷”という漢字を誰一人生徒が読めず生徒側から苦情が来たためローマ字の“TSUTAYA”が採用されたという過去を持つ。
それが今では実名のように全国に広がっているが、実際は“蔦谷”である。
楓はそれを知らずに志望校に“蔦谷”と書き込んだと思われる。



「(どうする…。どうするよ。俺。)」

楓の選択肢は二つであった。

@留年して来年また紀伊国屋高校を受験する。

Aここを受ける。



(まて…まてよ、俺。しっかり考えるんだ。これは一生に関わる事だ。こんな高校出て一生を棒に振るのか……。いや、だけど浪人。浪人だぞ?大学受験じゃあるまいし浪人はないだろ……!それに中学で浪人て世間的にどーだよ。聞こえが悪いことこの上ないよな。そういうの母さんとかリアルに気にするからな。それに浪人したとして来年年下と一緒に勉強すんのか?………それ、嫌だな。でも、こんな高校で―――――――……………………………………………………











よし、受けよう。うん。いいや。なんか、浪人って響き嫌だし。受けよう。)


アッサリと決断を下した楓は周りのワル達を尻目に校舎へと歩を進めた。

全国有数の進学校から一転して全国有数のワルの巣窟での高校生活をスタートさせることになってしまった楓。

――こうして場面は最初の………嘔吐に戻るわけである。

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あきゅろす。
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