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蛇足

彦星が元気よく走り去って行く姿を見送ると楓もホッとして歩き出した。

よし、これでゆったり落ち着いた下校時間を堪能できる。

バイトの許可証も貰ったし。

あとはどっか適当な店か何かに寄って無料で配布される求人誌でも貰って帰ろう。

あ、それと新聞の広告についている求人チラシもチェックしておかなければ。

あれは意外と穴場が載っている。

楓がそんな事を考えながら足早に下駄箱に向かうと、そこには先程別れたよしおが腕組みをして下駄箱にもたれかかっていた。

どうやら誰かを待っているようである。

「よしお君?」

楓が声をかけるとよしおはハッとしたようにこちらを見てきた。

「どうしたの?誰か待ってるの?」

楓がそう問えばよしおは何やらバツが悪そうに顔を背けると小さな声で呟いた。

「お前を…待ってたんだ」

「俺を?」

「あぁ。帰り……一緒に帰っていいか?」

うーん、そんなに縮こまらなくてもいいのに。

けど帰りか。

今日は求人誌取りに行こうと思ったんだけど。

そう思ってチラリとよしおを見てみると、やはり彼はきまりの悪そうな表情を浮かべて縮こまっている。
なんか捨てられた猫みたいだ。

楓は内心そんな事を思いながら、よしおに向かってニッコリ微笑んだ。


「もちろん。一緒に帰ろうか?」

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あきゅろす。
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