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蛇足

楓が無言でその状況を見守っていると、隣に居た彦星が楓の服をチョイチョイ引っ張ってきた。

悔しいが自分よりはかなり身長が高い彦星に、楓は必然的に見上げる形となってしまう。

……本気で悔しいぞ


「何?彦星?」

「なぁ、楓。ギャップとか女とか……俺、池ちゃんが言ってる意味全っ然わかんなかった。楓、わかりやすく説明してくれよ?」

彦星は不満そーに蛭池を見て言った。

「彦星……、今まで蛭池君の話ずっと聞いてきたんじゃ…。」

「小学生の時から聞いてっけど、全部よくわかんなかった!」

「……お前それでよく蛭池君の話聞きに行こうってあんなに張り切れたな。」

「なんかいつも意味分かんないケド、スゲー事言ってるよーな気がした!」

「多分今までのも、そう大した事言ってないと思うよ。」

楓は不良共に囲まれている蛭池を遠い目で見ながら言った。

「でも、なんか皆ばっかわかってズルいぞ!俺も知りたい!」

「………つまりね。全くもって見た目じゃイチゴミルクなんて飲まなさそうな蛭池君が女の子の前で、自然にイチゴミルクを飲むだろ?ここで、ひとまず蛭池君の見た目とイチゴミルクが似合わないって言う避けようもない事実が産まれるんだ。これが、ギャップ。ここまでは、わかる?」

「うん、うん!わかる!」

「それでさ、そんな蛭池君とイチゴミルクのギャップに女の子はドキッとする(蛭池談)。つまり、『蛭池君って……実はすっごく可愛いんじゃ……!ドキドキする!』って女の子が思うわけ。蛭池君はそれを狙ってワザとイチゴミルクを飲んでるんだ。彦星、わかった?」

「そーゆーことか!わかった!ヤッパリ楓は頭がいーな!」

そう言うと彦星はニッコリ笑って蛭池の方に向き直った。

すると、蛭池を囲む一団の会話が少々……いや、かなり変化していた。


「じゃあ蛭池さん!俺のギャップアイテムはなんすか?!」

「おめぇはコアラのマーチだ。」

「じゃあ、俺は?!」

「おめぇは遊戯王のカードだ。」

「俺は?!」

「折り畳み傘だ。」


俺は、俺は!と更に周りの連中は蛭池に自分のギャップアイテムをせがんでいる。

もうひたすら滑稽な場面である。
するとそこへ彦星がビョンビョン飛び跳ねながら蛭池に叫んだ。

「なぁ!なぁ!池ちゃん!俺は?!俺のギャップアイテムは?!」

「おぉ、彦坊。おめぇのギャップアイテムはだなあ……」

「うん!うん!」

「勉強道具だ。」


……………っ!

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