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蛇足

「例えばなぁ、俺がイチゴミルク飲むって聞いておめぇらどう思った?」

「なんか……すごいなぁと思いました!」

「似合わないなぁと思いました!」


お前ら小学生の作文じゃねぇんだから…。


「それが蛭池さんがイチゴミルクを買うのとどう関係あるんすか?!」

そうだ、そうだ、と回りは一層ヒートアップし始める。


お前ら………。一体この蛭池という男に何を感じるというんだ……。

「おめぇら、今俺がイチゴミルク飲んだら凄いとか似合わないとか言ったよな。そこだ。」

「そこっすか?!」

「ドコっすか?!」


コイツら何だ。ギャグなのか?


「例えば……俺みてぇのがイチゴミルクをナチュラルに飲んでみたとするじゃあねぇか。しかも女の前で。」

「女の前っすか?!」

「そうだ。女の前ってのがあポイントなんだよ。俺がよ、この俺がだあな。イチゴミルクを女の前で飲むだろ?そしたらどうよ。女はどう思うよ?」

「……すいません。俺、女じゃないんでわかりません!」

どんだけ正直なんだ。いや、確かにそーだけど……、なんだかコイツら可愛くなってきたぞ?


「ったくよお、ちょっとは想像力をはたらかさねぇか。」

蛭池はそう言うとポケットからチュッパチャップスを取り出した。
そうしておもむろにパッケージ開けて、チュッパチャップスをパクりと口に含んだ。
おおー、と回りから訳のわかない歓声が上がる。


「どうだ。」

どうだ――、そう言ってくる蛭池。

どうもこうもグラサン掛けた出所直後の40代のオッサンに見える蛭池が無表情でチュッパチャップスを食べている。

全くもって滑稽としか言いようがない。


「蛭池さんがチュッパチャップスなんて……らしくありません!」

うん、かなり変だよ。

「それがだなあ………“ギャップ”っつーんだ。」

「ギャップ……」

「ギャップっすか……」

「結論から言えばだなあ…、女はギャップにすげぇ弱ぇんだ。」

蛭池のその言葉に回りはゴクリと生唾を呑みこむ。


「蛭池さんはそんな女の深い心理まで読みとって…ワザとイチゴミルクを……」

「……さすがは蛭池さん!渋いっす!」

渋い……?今の話のどう言った点が渋かったんだ?
渋いって言っときゃいーもんだと思ってるな……、コイツら。


楓は終始無言でその滑稽な状況を見守っているしかなかった。

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