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蛇足
大物編
「…何やってんだお前ら」

シンと静まり返った室内に低い声が放たれた。

あぁ何故こうもタイミングよく、いやタイミング悪くこの男は登場するのだろう。

空気を読め。

いや頼みますから読んで下さい。

心の中でそう懇願する楓をよそに蛭池は、何事かとこちらに近づいてくる。

「あと池ちゃんも楓の大親友だ!!」

「ちょ、彦星」

ヤメろ、と言い掛けた瞬間、突然周りは騒然となった。

自分をパシろうとしてきた奴らさえ床に伏しながらも驚き目を見開いている。

「蛭池さん。マジなんすか?」

ひとりの生徒が恐る恐るそう言った。

…蛭池、さん?しかも敬語?

蛭池と彼らは同い年のハズだろう。
なのに、蛭池に対してのこの態度はなんだ。

およそさっきまでとは同一人物とは思えない程に、敬意に満ちた目をして蛭池を見ている。

「俺と楓がか?そりゃあ大親友に決まってらぁな」

蛭池がそうあっさり答えると、騒めきは一層大きくなった。

どうやら蛭池は、風貌通りの大物らしい。

さっきまであんなに高圧的で優等生呼ばわりしてきた彼らは、血の気が引いたように青い顔をしている。

代弁するなら、何てこった蛭池さんの大親友をパシろうとしちまった殺される!!といった具合か。

「なぁオイ。話が見えねぇんだが…」

「もう聞いてくれよ池ちゃん!」

「ま、待てよ!俺らが悪かった!謝るから許してくれ!」

必死だ。そんなに蛭池は権力者なのか、少し見なおした。

いつのまにか映画の舞台から降ろされていた楓は、黙って事の行く末を見守る事にした。

「…?何があったんだ」

「え、い、いや!その……」

「楓のヤツ、オレらに黙ってコイツらと友達になってたんだぜ!」

「ちがっ!悪気はなく………え?」

一瞬、教室内に微妙な空気が流れた。

皆面食らったような顔して彦星を見ているが、楓はひとり頭を抱えていた。

あぁそうだ、こいつバカだった。

「……友達、ねぇ」

蛭池は少なくとも彦星のマジボケをこの中ではダントツで見てきている。

状況と彦星の発言で、事の真相を理解する事はきっともう造作ないのだろう。

まだ床に伏して必死に弁解を述べる彼らを蛭池は見据えた。
グラサンだから正確には分からないが。

「お前ら、楓に何した…?」

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あきゅろす。
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