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蛇足
連行




「お前が三木楓か?」




え?

楓は突然目の前に立ちはだかった強面な集団に、ハタと体を硬直させた。

とっさに周りを見渡すが、此処には自分と……このガタイの良い男達しかいない。

これはどう転んでもこの男達が口にした“三木楓”という名前が自分を指す以外他ならない事を示していた。

あぁ、何だかこれは面倒事の匂いがプンプンするな。

蔦屋に入学して早3ヶ月弱。

どうして自分はこんなに面倒事にばかり巻き込まれるのだろうか。

楓が目の前に広がるハイエナの群れから軽く現実逃避を図っていると、突然鈍い音が楓の耳の奥へと響き渡った。

「……テメェが三木楓かって聞いてんだよ!?さっさと答えやがれこのカスがっ!」

楓が恐る恐る鈍い音のした方へと視線を向けると、そこには壁にのめり込む男の足が存在していた。

「(…………こ…、こわいんですけど!!!!)」

楓はその事実に一気に表情を引きつらせると、勢いよく首を縦に振った。

すると男達は更に苛立ったような表情で楓を睨み付けると、忌々しげに口を開いた。

「ったく、テメェみたいなカスのお陰でこっちは二度手間食う羽目になってんだよ。……痛い目見たくなかったら黙って顔貸せ」

「(……物凄く行きたくない……)」

楓は男の言い放った一言に、再度現実逃避しかける頭を必死で立て直すと小さく頷いた。

何だかよくわからないが、ここは逆らったりしたら死亡フラグは確実だ。

だいたい、今現在既にフラグは総立ちの状態である。

いくら今が授業の15分休憩中で、楓はトイレに行く途中だったからと言って、今ここで「あの、トイレに行きたいのでどいてくれませんか」等とは毛ほども言える状況ではない。

楓が頷いたのを確認すると、男達は楓を囲むようにして廊下を歩いた。

「ったく、こんなショボいヤツが三木楓とはな……」

「手間かけさせやがって…このクソチビが…」

「マジで捻り潰してぇーマジでムカつく」

「……………」


あの、本人居るんですケド……

楓は周りで口々に交わされる自分への悪態に嫌な汗が流れるのん感じると、小さく溜め息をついた。


せっかく今日のお弁当にはオムライスを入れたのに。

これは昼ご飯を食べるのも、彦星の素晴らしいまでの食いっぷりを見るのも叶わないな、と楓が直感的に感じると……


楓は自分を連行する男達の背中を恨めしげに見ずにはいられなかった。

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あきゅろす。
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