蛇足
ヤキモチ
気に食わない。
よしおの気持ちの大半を占めるその言いしれぬ苛立ち。
それを、ただ単に彦星に対して向けられたヤキモチからくる感情だと知るのは、その場でただひたすらに我関せずとメールを打つ蛭池だけだった。
「それはそうだけど……やっぱり俺心配だよ。ちょっと見てこようかな」
勿論、ヤキモチを焼かれている当の本人はよしのそんな感情知る由もなく、よしのの怒りに油を注ぐ発言をする。
これこそ、蔦谷学園1年3組の日常風景であった。
「バカか!?止めとけ!お前が行ったところでどうしようもねぇだろうがっ!?」
「いや、でも……」
いくら言っても引きさがろうとしない楓によしおが本気で青筋を立て始めた時だった。
キーンコーンカーンコーン
二人の良い言い争いを止めるかのように、教室中にチャイムの音が鳴り響いた。
「ったく、てめぇが遅せぇから昼休み終わっちまったじゃねぇか」
「別に昼休みが終わったのは俺のせいじゃないよ……」
「お前のせいだよ……ったく、堀田なんか心配してっからこんな事になんだよ」
そう言いながら自分の席に戻って行くよしおに、楓はため息を吐くと、まだ机に広げられたままの自分と彦星の弁当を片づけ始めた。
まだ殆ど手の付けられていない弁当。
まぁ、蛭池はぺろりと平らげてしまっていたが、今日の弁当は楓が初めて一人で作ってきたものだった。
『オレ!ハンバーグが食べたい!!』
そう昨日の夜、満面の笑顔で楓に抱きついてきた彦星立って希望も、今日の弁当には入っていたのに。
「……はぁ、タイミング悪いなぁ」
「まぁ、気にすんな。今日のハンバーグ中々普通だったぞ」
「……ねぇ、中々普通ってさ蛭池君。それ褒めてんの?」
「………まぁ、気にすんな」
「…………」
ケータイから視線すら上げることなく言われな微妙なフォローに、楓は口をぎゅっと結ぶと弁当の蓋をしめようとした。
しかし、その動作は教室中に響いた大きな声によって阻まれる事になる。
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