蛇足
2
「堀田ぁ?お前、そんなに短気になんなよ?おい。蔦谷に入ったからには蔦谷のルールに従え。お前のお友達の蛭池君なんかは随分あっさり承諾してくれたけどなぁ」
「そんなの知らん。オレと池ちゃんは別の人間だ」
「まぁ、確かにな。でもなぁ」
「……帰る」
彦星は無表情のまま男に背を向けると、出口へと歩を進めた。
その瞬間
ひゅっ。
彦星の真横を風が抜けるような音が響いた。
そして、間髪を入れず次の瞬間には部屋中に轟音が響き渡っていた。
彦星の目の前には先程彦星が蹴りあげたモノと思しき机が、今まさに彦星の向かおうとしたドアへと激突し見るも無残な姿になり果てていた。
「……………」
「堀田彦星」
静まり返った教室の中で、男の声だけがただ静かに響く。
既に原形を留めていない可哀想な机から、彦星は顔を上げるとゆっくりとした動作で男の方へと視線を移した。
「なに」
「理由を言えよ、なぁ?別に悪い話じゃねぇ。只、俺はさ、お前の腕っ節認めて1年まとめ上げて俺らの仲間に入らねぇかって言ってんだよ。俺はお前を認めた。なのにお前は何でそれを拒む?」
「……………」
「この俺を……この蔦谷のトップである俺を拒むんだ、それ相応の理由があるんだろうなぁ?堀田彦星君よぉ?」
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