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蛇足
勧誘
堀田彦星は不機嫌だった。


「…………」

「おい、堀田。いい加減お前も此処にも慣れてきたと思うがよぉ」


その原因は他でもない、今現在彦星の前で偉そうにふんぞり返りながら此方を見ている男にあった。

男の周りには、更に十数名程の男達が居り、ふんぞり返る男の周りで各々好きな事をしている。

彦星の事をきちんと見ている者は、この目の前の偉そうで小柄な男しか存在しない。

そんな男を彦星は無表情で見下ろすと、ただ黙ってその男の言葉を鼓膜に響かせた。

彦星は、本当に不機嫌だった。

イライラして仕方がなかった。

「…………」

「そろそろ、だ。お前もこっちに来い」


こっちに来い。

そう言ってニヤリと笑った男に、彦星はピクリと眉を動かすと、そのまま男の前に置かれていた机を勢いよく蹴り飛ばした。

イライラする。

一気に宙に浮いた机は、すぐに重力に逆らう事を止めるとそのまま男のすぐ脇へと激しい破壊音を響かせて落ちて行った。

今まで好きな事を好きなようにしていた周りの生徒達は、その教室に突然響き渡った轟音に、今さらのように彦星の方へと目をやる。

彦星は無表情だった。

不機嫌だった。

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