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蛇足
秘密の花園1
ここまであからさまな人間はいない。

少なくとも真っ当かつ一般的に普通の人間と対人関係を築いてきた楓には、経験がなかった。

自分が良かれと思う事なら他人もそう思う筈というめちゃくちゃありがた迷惑な思考を持つ堀田彦星。

ただのバカだ、語彙力も理解力も、知能という知能が欠損しまくっていると、そう彼を理解していた。

そんなもんじゃなかったのに。

これは教訓だ。
バカはどこまでもバカだ。
一箇所カビが生えれば全てに侵食していく。
バカだってそうだ、彦星の場合。

堀田彦星は、未知数だ。
バカの未知数だ。

もう何があろうとどんな発言が飛び出ようと彼はそんな人間なのだ。彦星なのだ。

そうでも思ってなきゃ、この先嘔吐だけじゃ済まされそうにない。
大体、彦星だけじゃない。
この学校には彦星レベルの人間しかいないのだから。

マトモな奴の一人二人居るだろうなんてもう、金輪際思わない。

現実を受け止めろ三木楓。




「おやおや、随分可愛らしい子だねぇ」

「ヤメろよばーちゃん。楓オトコノコなんだぜー」

…何故だ。

何故、俺は此処に居る。

何故……何故、俺は大荷物を抱えて此処に立っている。
此処、玉泉院の門の前に。

あぁそうだ。
現実を受け止めたその結果なんだこれは。


昨晩の食卓でぽろりと彦星の愚痴や玉泉院の事を言ったら、両親や弟までもが是非世話になれと言ってきた。

そのとき言外に、お前は三木家の汚点なのだと言われた気がした。

紀伊國屋を受験しそこねて、入学した学校は全国で有名な不良高校。

三木家の希望だなんだと期待するだけした結果がこれだ、親は泣きたいに決まってる。

それでも楓が入学する事を止めなかったのは、弟、翼の存在があったからだ。

翼も楓と同じように成績優秀で、中二にして紀伊國屋確実合格と言われている。

兄がダメなら弟、両親の中から楓の存在は消えてなくなったも同じだ。


現実を受け止めろ。
そう自分に言い聞かせてきたじゃないか。

あんな自分をヨゴレ扱いする家より、辛うじて友達カテゴリーに属する彼と生活する方がきっと楽だ。
楽に決まってる。つーかもう楽だと思わないと今すぐにでも人生放棄したくなる。

今ある現実で、騙し騙し幸せに生きてやる。

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あきゅろす。
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