関係転換学各論
その3:*****
「またまたぁ!とぼけんなっての!善、お前さぁ、いっつもアイツの事睨んでんじゃん!まぁ、今までのお前のポジションを考えれば気持ちもわかるけどな!」
「え、俺別に睨んでは……」
「遠慮すんなっての!男同士、そこら辺はよぉく気持ちがわかるからよ!」
そう言うと、クラスメイトは俺の背中をバンバン叩いて笑ってきた。
そして、それを見ていた他の男共も何故だか俺達の周りにワラワラと集まって来た。
え、え。
何、この集団。
「善―!これでお前も俺達の仲間入りだなぁ!」
「大歓迎、大歓迎!」
「俺もさぁ、アイツ、ちょっと調子に乗ってるって思ってたんだよなぁ!」
「そうそう、マジで女子としか話さないしよぉ」
「しかも、アイツ。ぜってー、俺らも女子の奴らも見下してみてんぜ、絶対」
「あー、マジわかる。アイツの笑顔ウソ臭ぇんだよな!」
え、え、え……?
俺はいつの間にか輪の中心に居て、周りの男共がヤイヤイと好き勝手に交わす言葉に混乱していた。
これは、一体どう言う状況だ。
俺はまだヤツとは一度も話した事がないからわからないが、ヤツは俺達の事を見下しているのだろうか。
今、女子達に向けているあの笑顔も、ウソ臭い笑顔なのだろうか。
否。
授業中とかたまにアイツが視界に入ってくるから俺はちょっとだけヤツを観察しているのだが、アイツは人を馬鹿にしたような態度はとっていないと思う。
授業も真剣に聞いてるし、教科書が届いていないのか隣の女子に借りて見ている時は、本当に申し訳なさそうな顔をしていた。
それに、あの笑顔も俺はウソ臭いとは思わない。
普通に奇麗な笑顔だなぁと、俺は思うのだが。
でも、確かに今女子に向けてる笑顔は、授業中にとっさに先生の言った一言で笑った時の笑い方とは違う気がする。
やっぱり、女子には少しは気を使っているんだろう。
まぁ、転校してきたばっかだし、当たり前か。
俺が一人周りの男どもについて行けず、ボケッとそんな事を考えているとまたクラスメイトに背中をバンバン叩かれた。
「とりあえず、俺らはお前と同じ気持ちだからさ!」
「気にすんなよ、善!」
「………う、うん。ありがと」
何を気にするのかはわからないが、とりあえず礼だけ言っておいた。
そんな俺を、また周りの男共は楽しそうに笑いかけてくれたが、俺は何故かモヤモヤが止まらなかった。
そして、そんな男共に囲まれて苦笑いする俺を、女子軍団の隙間からヤツが見ていた事に、俺は全く気付いていなかった。
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