関係転換学各論
その最後:*****
「キモイ!」
「っ栞?」
「栞……!?」
大量に俺達へと注がれていたクラスの視線をかいくぐり、俺の元カノの栞……もとい、1週間で世界を救った勇者が俺の目の前に現れた。
しかも、眉間に多大なる皺を寄せて。
「あんたらキモイのよ!周り見て!皆、あんたらのせいで変な空気になってるのに気付かないの!?ったく、毎日、毎日……」
「何だよ、周りって……俺と池田くんは仲が良いから喋ってるだけだろうが」
「はぁ………ちょっと!一!」
「っは、はい?」
栞は俺の言葉を完璧無視すると、俺の隣で未だに真っ赤になっている池田くんに厳しい目を向けた。
心なしかその目には若干諦めの色が見え隠れしている。
ってか、変な空気って何だ。
喋ってただけだろうが。
「私、言ったでしょ?善はどこか頭おかしいって言うか、若干天然なとこあるんだって。毎回毎回、善の言動に振りまわされないで……。あんたら二人、傍から見てて……ちょっと心配になるわ。クラスの皆だってそうよ。受験前に妙な心配させないで!」
「栞、お前、ちょっとまず俺に対して誠心誠意謝れ」
「いや、栞?坂本くんは全然おかしくないだろ。カッコ良くて最高だと思うけど」
「来た……!予想はしてたけど善と同類……!」
栞は頭を抱えて、深いため息をつくと何か痛々しいモノでも見るような目で俺達を見てきた。
その間も、池田くんは、俺の方をどこか照れたような目で見ながら「坂本くんは最高だよ」と小さな声で呟いた。
うん、ちょっと恥ずかしい。
だって、カッコイイのは俺じゃなくて池田くんだろうに。
カリスマなのは池田くんなのに。
「いや、かっこいいのは池田く「善、あんたはもう黙って!お願いだから別の会話して!あんたら付き合いたてのバカップルか!?」
俺の言葉は般若のような顔で俺を睨んでくる栞によって遮られた。
卒業間近だと思ったからなのか何なのか、クラスで可愛い女の子に擬態するのを止めた栞に、以前のおしとやかさは欠片もない。
なのに、何故か女子からは最近人気なのだから、女子の世界とはわからないものだ。
しかも、やはり顔は以前同様、綺麗なままなので、未だに男子受けもいい。
女子受けも男子受けもいいなんて、なんてヤツだろう。
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