関係転換学各論
その最後:*****
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あの日から1週間。
俺は学校でも、少しずつ池田くんと話せるようになっていった。
最初は女子の鉄壁のバリアーもあったが、池田くんが朝俺の元へ来て「おはよう」と言ってくれた朝から、少しずつ環境は変わっていった。
あの朝のクラスメイトの目は、未だに忘れられない。
そして、今の俺達に注がれるクラスメイト達からの困ったような視線も。
そろそろ、俺と池田くんが会話する事くらい日常になってもいい頃じゃないだろうか。
「カリスマってさ、宗教的な意味じゃ、精霊から与えられた特別な力って意味なんだ」
「へぇ。そう言えば、ちゃんとした意味って俺も良く知らなかったかも」
俺の言葉に感心したように頷く池田くん。
そんな池田くんに俺は少しだけ嬉しくなって、電子辞書で引いた意味を見せてやった。
その間も、クラスメイトのままならない視線は絶えず注がれる。
まぁ、以前よりは大分減った方かもしれないが、やっぱり気になる。
「俺、これ見て池田くんは、カリスマだなぁって思ったんだ」
「えっ、何で?」
少しだけ焦ったような顔で、電子辞書から俺の方へ顔を向けてくる池田くんの顔は、やっぱり神がかったカッコよさだった。
「池田くんのカッコよさはカリスマだと思ったんだよ。神がかってるし。精霊から与えられたレベルだと思って。俺、ずっと、池田くんの事、スゲーなって思ったんだ」
「……っえ!?」
そう俺が何の気なしにそう言うと、池田君の顔はみるみるうちに真っ赤に染まり、俺を慌てたような目で見てきた。
うん、やっぱり池田君は赤くなってもカッコイイ。
「っは!?ちょっ、やめろよ!俺なんかより、坂本くんの方がカッコイイだろ!マジで、そういう事言うのよせ!坂本くんは優しいし、かっこいいし、最高じゃないか!」
「っはあ!?」
池田君の思わぬ言葉に、今度は俺が赤くなる番だった。
何を言っているんだろう、この人は。
俺なんか、池田くんとは比べたらその他大勢に紛れてしまう人間だと言うに。
そう思うと、恥ずかしさと居たたまれなさで、体中が熱くなってしまった。
「何言ってんだよ!池田君が一番かっこいいに決まってるよ!俺の中じゃ、池田くんはカリスマの代名詞なんだ!」
「違う!それならカリスマなのは坂本くんだ!坂本くんは全部が最高なんだ!」
「違う!最高なのは池田くんだ!俺の中の一番は池田くんなんだぞ!?」
「っそ、それを言うなら俺の一番だって坂本くんだっ!」
そう、勢いよく叫び合う俺と池田くん。
言い合う度に、互いに赤く染まる顔。
真っ赤になりながら、でも真剣な顔で叫んでくる池田くんに、俺の心臓がバクバクと激しい音を響かせ始めた時だった。
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