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「…であるから、ここの指示語は前文の内容につながる訳だ。分かるか?」



戦人は黒板に書いた自分の文字と、沢山のラインやメモが書いてある教科書を交互に見た。教師という仕事には随分慣れてきたが、国語という教科の特性上、なかなか生徒たちがちゃんと理解したのか分かりづらい。本が読むのが好きでこの職に就いたが、教えるという行為の難しさを戦人はひしひしと感じていた。

かりかりと生徒たちのペンを走らせる音が、室内に静かに響く。



(――よし、今のところ寝てる奴はいないか……………、っ!)



室内を見渡すとその中の一人とばちんと視線が合う。生徒のほとんどが自分のノートか黒板を見ている中、一人だけ戦人をじっと見ていたのだ。

授業中はなるべく見ないように気をつけていただけに、戦人は顔を真っ赤にしてすぐさま視線を逸らした。彼はその様子にショックを受けることもなく、戦人を見つめ続ける。



その人物の名前は天草十三。彼は戦人の教え子であり、そして恋人でもあった。

恋人になる前からよく自分のことを見ている生徒だとは思っていたが、こうして恋人となって意識して始めてみると毎時間自分のことばかり見ていることに気づいた。そんなにもねっとりと舐めるように見られていると授業がしづらいため、天草に止めるように言ったが、「戦人さんの授業はちゃんと聞いてるんで大丈夫ですよ」と笑顔で返された。勉強しているようには見えないが、確かに天草の国語の成績は良い。だが、戦人が言いたいのはそんなことではない。



(……お前は何ともなくても俺は恥ずかしいんだよ…ッ…!!)



紅潮した顔を隠すように、ぎゅうっと教科書を握り締める。

戦人が思い出すのは数日前のことだ。付き合い始めたばかりだというのに、天草に言われるがまま自宅へ向かえて体を重ねあった。あの時は気持ちが高ぶっていたのに加え、気持ちよさと嬉しさでいっぱいで何も感じなかったが、時間が経って落ち着いて考えてみると、天草の顔を見られないほど恥ずかしかった。



(だ…、だって俺…すっげえ喘いでたし…!かっ顔とか合わせられるわけねえっ…!!)



耐えられなくなってガンッと教卓に頭を打つ。鈍い音に驚いて、生徒たちの肩が大きく跳ねた。しかしどうやら自分の感情を抑えるのに精一杯で、戦人は周りに気づいていないらしい。うーとかあーとか呻るような声を出し、体からは今にも湯気が出んばかりだ。生徒たちが心配そうにあちらこちらでひそひそと話している中、天草だけがその様子を愛おしそうに見つめながら口元を緩ませていた。











恥ずかしがり屋の恋人











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湯木さんに相互記念に頂きました!!

何と以HPで公開していた生徒×教師設定の天戦で書いていただきましたヽ(*^^*)ノ

ありがとうございました!これからもどうぞよろしくお願いしますー!(≧ω≦)










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あきゅろす。
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