快晴、青春でしょう
学パロ
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空を仰ぐ。
屋上から見上げる空は、遮る物が何も無くて広々としていた。所々浮かぶ雲が心なしか一瞬ハート型に見えた。
つまりは、そんな柄でもないことを考えるほどには自分は浮ついている。本当にらしくない。おかしくて、笑い出してしまいそうだ。


「…っと」


昼休みの喧騒が遠くに聞こえる中、ばたばた、階段を駆け上がる音が聞こえた。自然と頬が緩む。足音はすぐに扉の向こうまでやってきて、そして勢いよく扉が開かれた。豪快な音に、扉が壊れそうだと頭の隅で思う。


「…よお、天草」
「はー…すいません、待ちました?」
「いや、全然。今来たところだぜ」


こんなやり取り、現実でする日が来るとは思わなかった。(実際待ち合わせの屋上に来たのはつい数分前だから嘘ではない)
はあはあと荒い呼吸を繰り返し、天草が息を整えようとしている。額に汗が浮かんでいた。

「説教、食らったか?」
「食らってたらもっと時間掛かってますよ。軽い注意だけで解放されました」
「提出物あんなに滞納しといてか?幸運だなぁ」
「あの先生、男には甘いですからね」


シャツの首もとのボタンを2つほど外して、天草がへらりと笑った。つられて俺も笑う。しばらく笑いあったあと、いつもの様に給水塔の影へと向かう。
並んで腰を下ろし、下げていた袋から取り出した弁当を、ひとつ天草に手渡す。嬉しそうな笑みが少しだけ子供っぽくて、何だか可愛く思えた。


「今日もありがとうございます」
「おうよ。まあ、ひとつも作るのもふたつ作るのも、そんな変わんねえけどな」
「いーえ、俺には料理自体無理ですから。…じゃ、愛妻弁当頂きます」
「愛妻って、俺が嫁かよ?」
「いいじゃないですかー…あ、それ一口下さい」
「ん?ああ、いいぜ」


ここに来る途中自販機で買ったスポーツ飲料を天草に手渡す。ここまで走ってきたようだし、それくらいはいいだろう。
キャップを空け、ペットボトルを傾ける様子を眺める。ごくりと、天草の喉が動くのを見て少しどきりとした。…あれだ、多分こういうのを男の色気って言うんだろう。何となく気まずくなって目を逸らした。

そういえば、とキャップを閉めながら、天草が呟いた。ペットボトルを俺に手渡しながら意味有り気な笑みを浮かべる。


「何だよ?」
「これ、間接キスですよねぇ」
「な、」


考えてもいなかったことを言われ、かっと頬が火照った。思わずペットボトルを落としそうになって間抜けにも慌てる。何てこと、急に言い出すんだと、そう言おうとしたのだけれど、天草の耳が俺の頬みたいに赤くなっているのを見た途端、声が引っ込んでしまった。
へらへら、天草が照れ隠しのようにいつもの笑顔を見せた。俺は笑って誤魔化せなくて、更に頬を赤くする。でも、やられっ放しなのは悔しいから、ささやかな抵抗をしてみようと思う。


「…照れる位なら言うな、馬鹿」


耳だけでなく、頬もほんの少し赤く染めて、天草がですねと笑った。その唇を気にしてしまうのは、あんなことを言い出す天草のせいだ、絶対に。

嗚呼恥ずかしいったらありゃしない。
やっぱり俺の心は、堪らないほど浮ついていた。どくどく、心臓が音を立てる。











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