main_11|04|11 初恋に気付いた日(縁戦)


+++



右の足で、左の足で、交互に地面を蹴って蹴って。乱れる息も、縺れそうになる足も構わずに、ひたすらに走る。

頭にあるのは、兄の事だけだった。




(お兄ちゃん)



初めて、男の子に告白された。
最初は驚いて、それから私はすぐに断りの文句を思い浮かべて、何の躊躇いもなくそれを口にした。(だって、その人には悪いけれど、好きでも何でもなかったから)


『ごめんなさい、私、好きな人がいるから』


好きな人、の言葉に浮かんだのは、兄だった。


それはまったく予期していなかったもので、その時初めて、私は兄が好きなのだと自覚した。兄のことは好きだった、けれどそれはあくまで家族に向ける、親愛であるはずだった。
それがいつからその域を越えてしまったのか。
兄に恋情を抱くことがいけないことだと、私はもう分からない歳ではない。けして褒められたことではないと知っていた。きっと居もしない神様が、私を咎めるのだ。それを素直に聞き分けられるほど、私は大人ではなかった。



あまり使ったことの無い道を、形振り構わずに走り続けた。目指す先は、勿論彼が居る所だ。彼が一人で暮らしている、彼の祖父母の家。今すぐ、彼に会いたかった。
顔を見たい。声を聞きたい。その声で、私の名前を呼んで欲しい。酸素の足りない頭で考えられることは、それだけだった。唯ひたすらに、彼に会いたかった。

ああ、どうして学校の制服というのは走り辛いのだろう。飛んでいける翼があれば、良かったのに。





初恋に気付いた日






右の足で、左の足で、交互に地面を蹴って蹴って。乱れる息も、縺れそうになる足も構わずに、ひたすらに走る。

頭にあるのは、兄の事だけだった。







第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!