main_10|12|10 階段飛ばしはいけません(天戦)

元拍手御礼小説。


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顔を寄せて、唇を触れ合わせるだけの行為がどうしてこんなにも照れ臭いのか。
何度経験しても、一向に慣れる気配はなかった。心臓が忙しなく騒ぎ立てて、何が何だか分からなくなるのだ。だから何時もイメージトレーニングは役に立たないまま、唇が離れていく。その度に自らの経験の浅さが恨めしく思えた。
同時に、こいつはどれだけ経験があるんだろう、何人とこんな事をしたんだろうと芋蔓式に考えて、胸の下のほうがちりちりと焦げ付くのだ。昔のことなんて気にしないと言える程に、大人であれば良かったのに。自分は所詮子供なのだと思い知らされて、開いた距離はどう足掻いても詰められないのではないかと不安になる。
キス以上の事をしてくれないのも、自分が子供だからなのだ。


「…なあ、続きは?」


口付けで乱れた呼吸が幾分か落ち着いてから、戦人は自分の上に覆いかぶさったままの天草に強請った。
返ってきたのは、お決まりの困ったような笑顔だった。きっと自分にはこの表情は出来ないんだろう。


「まだ駄目ですよ」
「…やらしいことは18歳以上から?」
「そうそう」
「ふうん、キスはやらしくねえの」
「これくらいは挨拶みたいなもんでしょう」


流石、フランス帰りは違う。戦人は皮肉を込めて笑った。背中のソファーがやけに硬く思えた。

俺は、キスだけでも緊張するしどきどきする。天草は違うんだろう。きっと軽いスキンシップくらいにしか思ってないんだ。


「…この年なら、してる奴なんてたくさんいるぜ?」
「あと1ヶ月で18でしょう、それくらいは我慢してくださいよ」
「ケチ」
「俺だって我慢してるんですからね」


じゃあしてくれればいいのに、という文句は天草の口の中に吸い込まれた。
侵してくる舌にたどたどしく自らも絡む。たったそれだけの事でも、出来る様になるのに随分掛かったものだ。


「…んぐっ」


急に腰を擦り寄せられる。それが、服越しにも硬くなっているのが分かり、戦人は頬を赤くした。慌てて天草の胸を押し、唇を離す。荒い呼吸を繰り返しながら天草を見ると、意地の悪い笑みで返された。


「これくらいで照れてるようじゃ、続きなんて出来ませんぜ?」
「、だって、お前…!」
「言ったでしょう、俺だって我慢してるんです。でも、あんたがそんな調子じゃ出来ませんよ。…せめてキスくらい、もっとリラックスしてできるようにならねえと」


必死に装っていた余裕があっさりと引き剥がされ、戦人はさらに赤面した。熱い頬を、からかう様に天草の指がなぞる。






(ちゃんと待ってるから、一段一段、上っておいで)






あきゅろす。
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