main_10|11|28 賄いハッピーエンド(天戦)
20000hit御礼小説。
「Ep4で、ベアトに追い詰められた戦人を助けに天草登場。ベアトを倒し、黄金と当主の座をゲットした戦人。」
ギャグなのかシリアスなのかよく分からない、まとまりのない話になってしまいました…すみませんOTL


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テラスの上で、金髪の女が笑っている。下品な笑い声だ。雨で濡れたせいで服が身体に纏わりつく不快感がさらに苛立ちを増長させる。目の前の女と金蔵を殴り飛ばしたい衝動を腹の中で膨らませながら、戦人は女を睨みつけていた。


「いい加減、お前の想い人の名前を妾に教えてくれって。なあ戦人ァ?」
「…うるせぇな。お前だって言ってんだろうが、ベアトリーチェ。ここにお前の突っ込んで、俺は2番を選ぶ」
「茶化すなよォ。教えてくれないとテストにならぬではないか」
「悪かったな、特定の相手なんざいねぇよ。残念だったな。―――それより、さっさと降りて来いよ。その面ぶん殴ってやる」


ぐっと拳を握り、殊更ベアトリーチェを睨みつける。彼女は変わらず下品に笑い、思い人は誰かと尋ねてくるばかりだった。
(…畜生)
館の扉も窓も、全て施錠されている。中に入るには、この女をどうにかして鍵を開けさせるしかない。しかし、この調子では現状はなかなか変わりそうに無かった。


「―――どうせなら、俺の名前でも入れてくださいよ」
「え?」


まったく予期していなかった、男の声。振り返るより早く誰かの片腕に抱き寄せられる。驚いて見上げると、見知らぬ男の顔があった。


「………何者だ」
「さあ、誰でしょう」


言葉を無くした戦人の代わりのように、ベアトリーチェが眉を顰めて男に聞いた。男はへらりと笑って誤魔化し、そしてベアトリーチェに拳銃を向け、あっさりとその引き金を引いた。


「―――っ」


発砲音に戦人の肩が震えるのと同時に、弾丸はベアトリーチェのすぐ横の空間を切り裂いた。美しい金髪が揺れる。完全に笑みを消したベアトリーチェが、男を睨んだ。


「―――すみませんね。この人、あんたにやる訳にはいかないんですよ。…お嬢のためにも」


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…かつては金蔵が座っていた大仰な椅子に、戦人はその身を預けた。座り心地は文句なしに最高だが、あの金蔵が座っていたのだと思うと妙な気分だった。


―――いや、それより。一番妙なのは、あの2日間だった。
殺されたはずの人々は死んでいなかったし、あのベアトリーチェという女が何者なのかも分からずじまいだ。何が起こったのか、把握できないまま――台風が過ぎ、いつの間にかうみねこがにゃあにゃあと鳴いていた。


結局、何だったのだろう。



「どうしたんです、難しい顔して」
「……一番てめぇが分かんねぇ」
「はい?」


あの日急に現れ、当然のように今も戦人の傍にいる男を睨む。


「いいじゃないですか。全て丸く収まったわけですし。ねえ?」


確かに。あの一件で、譲治と紗音の結婚も朱志香と嘉音の交際も認められた。戦人にとっては不本意であったが戦人という当主も決まり、親達の金の問題も解決した。そして誰も死ななかった。問題は全て消え、無事朝を迎えられた。


「…そりゃあ。一応収まった、けど」
「ならいいでしょう」
「いや、いいけど納得できな…っおい、こら!」
「すっきりしないのは欲求不満だからじゃないですかい。俺でよければ喜んでお相手しますよ」
「ひいっ、や、めっ…!天草!」


大きな掌が無遠慮にズボンの上から太股を撫で、戦人の背中に鳥肌が立つ。頬にキスを落とされて情けない声が上がった。目の前の端正な顔に、どきどきと心臓が騒ぐ。


「っ、〜〜〜あ」


唇をぺろりと舐められて、瞬時に顔が熱くなる。まずい、流されかけている。どうにかして止めさせようとその胸を押すのだが、びくともしない。身体を触られる事が、認めたくないが気持ち良くて、うまく腕に力が入らないのだ。


このまま、流されてもいいかもしれない。ふわふわと蕩け始めた脳がそんな事を考え出した頃、重い扉が開く音がした。


「―――何してんだ、駄犬」
「あ」


ふと見れば、扉の前で留弗夫が仁王立ちになっていた。笑顔だったが、目が笑っていない。戦人さえも背中がヒヤリと冷えた。


「…なんですか、お義父さん。今取り込み中なんですが」
「誰がお義父さんだ、俺は手前の親父じゃねえ。薄汚ぇ手でうちの戦人に触るな」


また始まった。という呆れと助かったという思いにほっと胸を撫で下ろす目の前では二人が殺気を滲ませながら言い合いを始めていた。いつもの事なので仲裁する気にはならない。

現状で問題があるとすれば、天草が隙さえあれば手を出そうとしてくることくらいか。それまでに、六軒島は平和だった。



賄いハッピーエンド


(まあ、嫌いじゃない、そういうの)






あきゅろす。
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