main_10|11|10 くちびるからつたわる(天戦)


学パロで、後輩天草×先輩戦人。
天草がヘタレです。

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立ち入り禁止の屋上給水塔の陰に並んで腰を下ろし弁当を広げるのが、いつの間にか昼休みのお決まりになっていた。無論それは、男同士のカップルが教室やら中庭やら人目のつく場所でいちゃつきながら食事なんてできやしないからであって、人気の無い屋上を選ぶのは必然だ。


「ごちそうさまでした」
「おう、お粗末様」


何時ものように、戦人が作ってきた弁当を食べ終わり、天草は小さく合掌した。


お互い部活にも所属しておらず、勿論中学が同じという訳でもなく、その上学年も違う。同じ高校に通っているということ以外に何の接点も無く、天草が一方的に一目惚れしただけだったというのに、今の関係まで持ってこれたことは奇跡的とすら思えた。こうして手料理を(それも自分のために作ってくれたそれを)食べれる日が来るなんて、正直今でも夢なんじゃないかと思ってしまうくらいだ。


「天草ぁ」


弁当を片付け終えた天草に、戦人が凭れ掛かる。服越しに伝わってくる体温をはっきりと感じて、天草が自分の頬に熱が上がるのを感じた。たったこれだけで照れてしまう自分は情けなくて仕方が無く、見られたくないのだが隠す間も無く戦人にはもうばれたらしい。心底おかしそうに、いっひっひと何時もの笑いを零していた。


「お前、可愛いよなあ」


笑い混じりに呟きながら、戦人は天草の肩に頭を預けたまま、天草の膝を指でからかう様になぞった。その動きを目で追う事がやましい事のような気がして、慌てて目を逸らす。心臓がばくばくと騒いでいた。手だって繋いだし、キスもしたし、それ以上もした。なのに、未だに付き合い始めのような反応をしてしまう。格好悪い。


「…可愛いのは先輩ですよ…」


悔しくてそう言い返したが、戦人に照れた様子はない。いーや、お前の方が可愛い。笑いながらそう返されて、天草は口を噤んだ。勝てる気がしなかった。


「それより、先輩じゃないだろ?」
「あ、…えーと、…戦人さん」


つい癖で、先輩と呼んでしまう。名前で呼ぶのもまだ恥ずかしいのだ。戦人、と口にするだけで、頬の熱が増す気がした。
それは案の定気のせいではなかったらしい。天草を見た戦人が、またおかしそうに笑った。


「名前呼んだだけでそんな照れなくてもいいじゃねえか」
「…照れてません、別に」
「よく言うぜ、真っ赤な顔してさぁ」


天草の頬を、ひんやりとした戦人の指がなぞる。その手を掴み指先に口付ける。散々からかわれたお返しのつもりだったが、やはり戦人に照れた様子は無く、くすぐってえと笑うばかりだった。


「天草、手より、口がいい」
「え…ここ、学校ですよ」
「そんなの今更だろ?」


ぐっと顔を寄せられ、反射的に身を引きそうになるのを堪える。ここで恥ずかしいから無理です、なんて情けなさ過ぎる。だが心臓の鼓動は激しさを増し、耳まで熱くなっていて、…正直一杯一杯だった。それでも、触りたい欲求の方が大きい。恋人にキスを強請られて、それを拒否する男なんているだろうか。

戦人の顎に手を添え、自らも顔を寄せる。鼻が触れ合いそうになったところで、戦人が目を閉じた。呼吸を感じる、唇が重なる。




くちびるからつたわる






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