main_10|10|11 To be, or not to be!(天戦)

続くかもしれないです。
よくわからないパロ

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がちゃり。

無機質で重厚な光に、重みを感じさせる音。暗く深い穴が真っ直ぐに天草に向けられていた。その向こうには、怯えた瞳。ばちりと目が合う。微笑んで見せると、殊更強い視線に射抜かれた。まるで手負いの獣だ。
警戒して、優位に立とうと喚き散らす獣のそれだった。だが、それが効くのは同じ獣だけだろう。銃口を向けられて尚冷静さを保つ天草には何の効果も無い。引き金に掛かった指は面白いほどにがたがたと震えていて、少し笑いそうになる。そんな調子じゃ、撃てっこない。仮に撃てたとしても、その素人っぷりじゃこの至近距離でもあっさり外しちまうだろう。
頭は冷静に状況を判断する。此処は天草が住んでいるアパートの、ベランダだ。其処にこの少年がいた。そして、此方に銃を向けている。彼は不法侵入者、俺は被害者。ついでに彼は殺人未遂にもなるかもしれない。
銃を向けられたのなら、即殴り倒す。普段の天草なら迷わずそうする所なのだが、そんな気は起きなかった。何しろ相手はどう見ても自分より年下、下手をすれば未成年で、その表情は害意満ちているようにに見えて実の所怯えた子供のそれだった。震える身体は哀れでしかない。いっそそれを通り越して、一種の同情と愛情を感じた。庇護欲に似ている。

銃を向けたまま引き結ばれていた口が、震えた。そして僅かに開く。そこから発せられる声はどんなものだろうか。


「…俺を、匿え」


低過ぎず、高過ぎない。少しの幼さを含んだ、顔に見合った声に、天草は口元を綻ばせた。それを見た少年が眉を顰める。
これは、幸運かもしれない。


「良いですよ」
「…え?」


笑みを深めてそう言うと、少年は目を丸くして驚きの声を上げた。無防備な表情は幼く見えた。


「なんです、あんたが匿えって言ったんでしょう?いいって言ってんですよ」
「…本気で言ってんのか?…お前、警察か?俺を保護しようってか」
「まさか。そんな風に見えるんですか?それに追われる様な事をしてるくらいですぜ、俺は。」
「…全然、見えねえ。…銃向けられて、何でびびんないんだよ」
「荒事には慣れてますからね、これくらいは」


微笑んで見せて、少年の気が抜けた一瞬の隙に銃口を手で塞ぐ。そのまま一歩踏み出し身体を寄せた。ほんの少しだが和らいでいた少年の表情が、はっきりと怯えを見せた。
やっと近くで、見る事が出来る。深夜の暗闇の中でも分かるほどに、少年は赤い髪をしていた。自分より少し低い位置にある眼は男にしては大きい。整った顔立ちだった。


「…で、どうします?」


本気で、匿われるのか。
半ば答えなど分かりきった問い。

汚れの見当たらない、瞳があちらこちら、僅かに宙を彷徨う。
どくどくと、彼の心音が聞こえるような気がした。



To be, or not to be!




けして弱くは無い迷いと、隠し切れない戸惑いを見せて、やがて。
怯えた眼をしながら、彼はこくりと頷いた。






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