main_10|02|24 せめて優しくお願いします。(天戦)
※学パロ同い年設定

+++


何で、こんなことになってるんだ。

首筋に天草の吐息が掛かってくすぐったい。後ろから抱きしめる形で天草が体を密着させてきている。

「あ、天草…」

震える声で呼んでみるが返事は無い。するり、とやたら緩慢な動作で脇腹を撫でられて、ひっと咽喉が引き攣った。

放課後。特別教棟の最上階、一番奥の資料室。そこで俺は天草に抱き付かれている。
何でこんな人気の無いところに来たかというと、別にこんなことをしに来た訳ではない。帰り際二人して担任に捕まって、授業で使った資料(それも大量の)を運んでくれと頼まれたのだ。それでこんな所まで来た。
それはまあいい。問題は、何でこんな所で俺はこいつに盛られているのか。
他愛も無い話をしながらここまできて、持ってきた資料を置いて。ふと背中を見せた途端抱きしめられた。…それ自体はいい。男同士ではあるが、俺たちは所謂恋人同士というやつだからだ。だからいきなり後ろから抱きしめるなんてのはそうおかしいことではない。だが場所が場所だ。
そうだ、状況を考えろ天草!
今は放課後で、ここは普段殆ど人の来ない埃被った資料室だとしてもだ。あくまでここは学校だ。誰かに見られる可能性はある。男女のカップルがいちゃついてるならまだしも、俺たちは男同士だ。見られるのは非常にまずい。

混乱した頭で、俺に抱きついたままのこいつをどうするか必死に考えを巡らせていると、脇腹にあった天草の手がふと妖しく動いた。
手は意味有り気に移動して、俺の制服のシャツのボタンを外し始めた。

「ちょっ、おま…!待て!待て天草、何考えて、」
「何って。分かりません?」

分かるとも。残念なことに分かる。だがハグやキスの類ならまだしも、これは本当に学校でやるべきことではない!
(待て待て待て、マジで待ってくれ天草、俺たちまだキスまでしか進んでないだろ!)
なんて言い訳が、通じるかどうか。むしろ「だから次の段階に進むんじゃないですか」なんて返されそうだ。

「や、やだ、天草…こっ、ここではまずいだろ…!」
「大丈夫です。入ったとき鍵かけましたから誰も入れません。窓も廊下側は全部曇りガラスですし、この高さじゃ他の場所からも見えません」
「そ、それはいいけど、それ以前にここじゃ…っ!」
「そうですねえ、あんま声出したら廊下に人がきたときバレちまうかもしれませんね。…あ、でも特別教棟は基本防音になってましたっけ。―――戦人さん、好きなだけ声出してくださいね」

誰が出すか!っていうか俺が女役かよ!
天草は止めるつもりは毛頭無いらしい。泣きたくなってきた。

「お前、何でこんなとこで盛るんだよ…!」
「いいじゃないですか、こういうシュチュエーション。放課後の人気の無い教室でヤるって、興奮しません?」

そんなやりとりの間にもブレザーは床に落とされ、シャツのボタンも全て外されていた。空気に触れる素肌が寒い。

「…っ、天草…!」
「なるべく優しくしますから…」

曝された素肌を天草の手がなぞる。優しいが、性的なものを感じさせる手つきに背中が粟立った。やっぱりこれは冗談でも遊びでもない。どうやら本当に天草は本気らしい。

怖いし、緊張するし、体はがちがちになっていたが、嫌だとは、何故か思わなかった。
そうだ。嫌じゃない。嫌だとは、思わない。だから、






俺はこれから、こいつに食われるのだ。(喜ばしいことに)







第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!