main_10|10|02 とびきり馬鹿で格好いい(ウィル戦)

20000hit御礼小説。
学パロでクラスメイトなウィルバト。
既に付き合ってます。
ほのぼので甘め?


+++


自分より少しごつごつと太い手首を、掴む。力の限り両手で握り締める。離さない、絶対に。


「戦人、離せ」
「嫌だ」
「離せって」
「い、や、だ」
「放送が始まっちまう…」
「俺の課題に付き合うって言ったの、お前だろ!帰るなよ途中で!」


耳元で怒鳴ってやると、ウィルはばつが悪そうに眉間に皺を寄せた。


「お前、俺と、犬猫とどっちが大事なんだよ」
「……」


そこで悩むな、馬鹿!
どうせ予約録画してんだろ。リアルタイムで見たいなら携帯で見ればいいだろうが。
そう言うと、ウィルは漸く帰ろうとするのを止めて、再び椅子に腰を下ろした。やれやれと溜息をつき、戦人も席に着く。
教室の前、黒板の上の時計を見遣る。学校に残っていられるのはあと1時間程度だ。その間に、この課題は終わってくれるのだろうか。不安だ。

投げ出したくなる気持ちをぐっと堪える。元はと言えば苦手だからと英語の勉強をさぼっていたのがいけないのだ。だからテストの結果が悪くて、課題をどっさり頂いた。
拳を握り持ち直していると、隣ではウィルが携帯を開きさっそく放送を見ていた。その番組ほとんど犬しか出ないじゃねえか。お前の大好きな猫は全然出ないって言うのに、その癖見るのか。
馬鹿だろ。

言いたい気持ちを押し留めて、課題に戻る。この猫馬鹿には何を言っても無駄なのだ。考えるな頭痛にならァとお決まりの台詞で誤魔化されるだけだ。


「ウィル、ここ、わかんねえ」
「そこは45ページの例文と同じ構成だ。当てはめてみろ」


眼は画面に釘付けなのだが、問えばしっかりと返事が返ってくる。しかもちゃんと正しいことを言っているのだから、改めてスペックの違いを思い知らされる。…かと言ってこいつに憧れはしない。正直こいつにはなりたくない。
いい奴だけれど、変な奴でもある。そんなことを考えながら、ペンを握る手を休まず動かし続ける。


「なあ、ウィル」
「どうした」
「さっきの質問、答えろよ」
「45ページの――」
「そっちじゃねえっての」


いつのまにか番組が終わったらしく、ウィルはこちらを不思議そうな顔で見ていた。手の中の携帯の画面にはテロップが流れている。


「お前は俺と、猫と。どっちが大事かってやつ」


我ながら女々しい質問だった。私と仕事とどっちが大事なのよ。そんな事を問うてくる、所謂うざい女のそれと同じだと思ってしまって、少し自己嫌悪した。
けれどウィルがまた難しい顔で押し黙ったから、自己嫌悪は何処かへいって、代わりにウィルに対する怒りのほうが込上げてきた。
そこは嘘でも、俺だって言えよ。何で変なところで不器用なんだよ。


「…しね」
「まだ何も言ってねぇぞ」
「もういい、死ね、馬鹿ウィル」


そっぽを向くと、慰めのように頭を撫でられて、殊更腹が立った。
こいつの中で、俺は猫と同じなんじゃないだろうか。愛玩動物、ペット。それと同じとか、ああ苛々する。ウィルの癖に。なんで。
頭を撫でる手を払い除けると、今度は目元にキスされた。かっと頬に熱が上がる。馬鹿、そんなので誤魔化されるな、俺。


「顔赤いぞ」
「うるっせえ!それで!俺と猫、どっちだよ!」
「お前だな」


あんなに悩んでたくせに、どうしてそうはっきり言い切るのか。
どきどきするから止めて欲しい。イケメンなんて、嫌いだ。




とびきり馬鹿で格好いい
(だから好きです)



「猫も、大事だけどな」
「…それさえ無けりゃ抱きついてるところだったぜ馬鹿ウィル」






あきゅろす。
無料HPエムペ!