main_10|09|28 御機嫌よう、潜在的ヴィーナス(天戦)
吸血鬼パロリベンジです。
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捨て子だった俺を拾ってくれた吸血鬼。初めて会った頃は、彼の顔がずっと上に見えたのに、いつの間にか俺が追い越していた。追い越す、と言ってもほんの少し高いくらいなのだが、自分の目線の下に彼の目線があると言うのは、嫌でも年月の流れを感じさせた。だというのに、俺が成長しても彼の見た目は一切変わらない。今では俺のほうが年上に見えるだろう。年月の流れと共に、俺は種族の違いまでも思い知らされる。


「十三ぁ、林檎食べたい」
「はいはい」


薄暗い屋敷の寝室で、怠惰にベッドに寝転がる彼が、気だるげに視線を動かして林檎を要求してきた。仕方ないなと返事をして、テーブルの上の林檎を手に取り、ナイフで皮を剥こうとする。


「あ、そのまんまでいい」
「そうですか?…はい、どうぞ」


軽く布で拭いてから林檎を手渡す。彼はがぶりと林檎に噛み付いた。そこから汁が溢れて、日に当たったことの無い彼の白い肌を伝った。ごくりと、俺は彼に気付かれないように生唾を飲む。
シャツだけ身につけて胸元も大きく開けて、ベッドでごろごろと寝転がるのは理性が悲鳴を上げるから止めて欲しい。誘っているとしか、思えないのだ。育ての親の様な彼にそんな感情を抱くのはおかしい事かもしれないが、でも、仕方が無いだろう。そう感じてしまうんだから。


「おいで、十三」


悶々とした気持ちをやり過ごそうとしていると、優しげな声を掛けられる。いつの間にか彼は林檎を間食したらしく、芯をテーブルの上に放って俺を手招きした。…結構でかかったのに、よく食べたものだ。
素直に近寄ると、ぐいと腕を引かれて、唐突なそれに俺は耐え切れず彼に覆いかぶさる形でベッドにダイブした。


「っ、ちょ、っと、戦人さん!?」
「おー、よしよし」
「…っ、俺もう20歳越えてんですから、そういうの止めてくださいって…!」
「照れんなよー、昔は喜んでたじゃねえか」


何年前の話だ、それ。この年で頭を撫でられるのは流石に恥ずかしい。止めて欲しいところだが、無邪気な彼の笑顔を見るとどうも弱いのだ、俺は。結局されるがままになった。


「…十三、一緒に寝ようぜー…」
「え?まだ日付が変わったぐらいですよ?もうですか…というか、一緒に寝るって」
「俺だって人肌が恋しいときくらいあるんだよ」
「…はいはい」


ふわあ、と大きな欠伸をして、彼は俺の腕の中にもそもそと潜り込んだ。吸血鬼の体温は、意外な事だろうが人間より少し高いのだ。彼の体から熱が伝わってくる。





御機嫌よう、潜在的ヴィーナス
(生憎不機嫌、人の気も知らないで)






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