main_10|08|28 溺愛の色(天戦)

・当主の戦人と護衛の天草
・社長室で
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戦人の仕事が大方片付くのを見計らって、天草は背後から戦人に抱きついた。抱きしめた体が、ぴくりと一瞬震える。最近でこそ抱きついてもぎゃあぎゃあ騒がれなくなったが、彼の頬が赤く染まるのは今も変わっていない。案の定じわりと朱色の差した肌を見て、天草は口元を綻ばせた。赤い耳朶に唇を寄せると、小さく抗議の声が上がる。


「天草、…仕事中だぜ」
「もうほとんど終わってるじゃないですか」
「じゃあ言い変える。俺もお前もまだ勤務時間内だ」
「そんなの、あと30分も経てば終わっちまいますぜ?」


上着の裾をめくり、ズボンに入ったシャツを引っ張り出す。そのまま素肌を弄ろうとした手は、戦人にがっちりと掴まれ動かせなくなった。


「…誰か来たら、どうするんだよ」
「鍵掛けてあるから大丈夫ですよ」
「……声とか、聞かれたら、」
「社長室も防音ですぜ、忘れました?」
「で、でも」


文句を言う口を、自らの口で塞ぐ。掴まれたままの手を抓られたが気にしない。口を離すと、突き刺さるような視線で睨まれた。


「…いいじゃないですか、ねえ?」
「帰ってからじゃ駄目なのかよ」
「帰ってからもしたいですけど、今もしたいです」
「…俺を殺す気だろ、お前…」


まさか。おどけて肩を竦める天草に、戦人は自ら口付けた。笑みを深めた天草が、手を拘束する戦人の手を優しく解く。向かい合う形で口付けに集中しながら、戦人の体を大きな机の上えと押し倒す。抵抗はもう無く、戦人は天草の首に腕を絡めた。シャツの下を這うてのひらを、諌める事も無い。


「素直、ですね」
「我慢できねえっつったの、誰だっけな?…触るだけ、だからな」
「そんなんじゃ俺もあんたも、満足できませんよ?」
「…帰ったら、好きなだけさせてやるから」


頬を染めながらの提案に、天草は頬が緩むのを抑えきれなかった。案の定何にやにやしてんだ、と腹に戦人の蹴りが入った。


「したくないなら、いいんだぜ、天草ぁ?」
「あ、いや、したいです、すごく」
「ならさっさとしろ」

顔を真っ赤にしている癖に、言葉はぶっきらぼうで、それが少し可笑しかった。



溺愛の色

勿論、触るだけで終わるつもりも、終われる自信も、これっぽっちも無い。





あきゅろす。
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