main_10|07|03 ささくれ(天戦)
学パロ設定です
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「お前、ギター弾けるんだな」
「少しだけです、かじった程度ですよ。これも借り物ですし」


笑いながら言う天草を眺めながら、持っているだけでも様になるものだと戦人は思った。イケメンは何をしても良く見えるから怖い。少しだけ腹が立った。
文化祭のバンドの助っ人らしいが、この様子ではメインメンバーより助っ人の方が目立ってしまいそうだ。そんな風に思ってしまうほどには、教室の片隅でギターを抱えているだけでも存在感があった。


「…そんな見られると照れるんですがね」
「は?」
「俺の事見つめちゃって。惚れ直しました?」
「馬鹿言うなよ」


残念、と呟く天草はまったく残念そうな表情を浮かべてはいなかった。きっと俺が見惚れていたと思っているに違いない。この野郎、と腹立たしく感じるが、そのこと自体は頭から否定はできなかった。

(実際、どきりとする程には、確かに格好良い)
むかつく。

また天草が女子に黄色い声で騒がれるのだと思うと、少しだけ腹が立った。だから正直言うと、ステージに立って欲しくない。これは嫉妬だ。

けれど、それは言ってやらない。言えば喜ぶのが目に見えているから。俺がこんな思いをするのに、奴が喜ぶのは気に食わない。
子供じみた、独占欲のような、胸の中に蟠るそれ。その存在を認めることすら、癪だ。


「…派手に失敗でもしちまえ」


ステージの上で転ぶなり、思いっきり音を間違えるなりすればいい。格好良い姿なんて、俺以外に見せなくていい。
ひでえなあ、なんて眉尻を下げて笑う天草を小突きながら、俺の心はざわざわと波立っていた。



ささくれ






あきゅろす。
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